第七章 黒の主、【天庸】に向かい立つ
151:絶望への序曲
■リリーシュ
■223歳 【天庸十剣】第九席
「ええ、ええ、ではそういった流れでよろしいですかねぇ、ヴェリオ様」
「カカカッ! 十分! カオテッドを潰すのであれば試運転にちょうど良い!」
「みんなで仲良く遠足ねぇ~。私のワイバーンちゃんたちも喜ぶわ~」
「祭りじゃのう! 楽しみじゃな!」
「初めてじゃねえか、全員参加なんてよ! 腕が鳴るぜ!」
「ラセツ、貴様は私が居ないからと勝手をするなよ?」
「わあってるよ!」
魔導王国の【天庸】本拠地。
そこに今、死んだ第六席のボルボラを除く、全ての【十剣】が盟主ヴェリオ様の元に集結した。
こんな事は初めてで、いまだかつてない大仕事に興奮を隠せない者が多い。
正確に言えば第一席、
やつは盟主様のお力によって目覚めたばかり。
″試運転″の中にはやつの事も含まれているのだ。
他の面子はすでにテーブルを囲み、いつでも出撃できる体勢にある。
第二席
第三席
第四席
第五席
第七席
第八席
第九席
第十席
そして盟主ヴェリオ様。
はっきり言ってカオテッドという街一つ潰すだけならば過剰戦力と言って良いだろう。
魔導王国そのものを相手取ることさえ出来ると思う。
実際、カオテッドが終わり、『第一席』と『枝』の試運転が済み、カオテッドで目的のものを手に入れられれば、次は本格的に魔導王国の王都に乗り込むのではと思っている。
まぁカオテッドで手に入れたものに、盟主様が没頭して研究なさる事も考えられるが。
ともかくこの大仕事が本番前の最終試験と言ってもいいだろう。
私も少なからず楽しみになってくる。
ガーブやラセツのように興奮を隠しきれないというわけではないが。
「じゃあみんな乗っちゃって~。ワイバーンちゃんたち、お願いね~」
皆がそれぞれワイバーンに騎乗する。
ワイバーンを騎馬ならぬ騎竜にするなど前代未聞だ。
事前に訓練はしたが、大空を飛ぶのはなかなか爽快で気持ちがいい。
ワイバーンもペルメリーの手で完全に調教されているし思っていた以上に頭が良い。
馬などよりもよほど優れた騎獣だと感じる。
亜竜とは言えさすがワイバーンと言うべきか、さすがペルメリーと言うべきか。
特に手綱を引かなくても、声で指示すればその通りに飛んでくれるので助かる。
「よおし! そんじゃ行くぞい!」
「ガーブ爺、其方が先行してどうする」
「なんじゃ冷めておるのう、クナ。楽しくないんか」
「クックック、楽しくないわけなかろう。どう虐殺してやろうかずっと考えておるわ」
次々に乗り込んでは空へと上がって行く。
ワイバーンのバサバサという翼音が重なって聞こえた。
「僕、飛ぶの遅いから先に行くねー! あとで抜かしてー!」
「おお! あっという間に抜かしてやるぞ、ティティ!」
「馬鹿かラセツ。あっという間に抜かしたら襲撃のタイミングがずれるだろうが。もう少し考えろ」
「うるせえよ、スィーリオ! 分かってるっつってんだろ!」
逸早く飛び立ったのがティティ。
ヤツが乗るのはワイバーンではないからな。
最初から一緒に向かうというわけにもいかないだろう。
「では皆さん、お任せしますね。くれぐれも計画通りにお願いしますよ、ええ。私たちもすぐに追いかけますので」
ドミオとペルメリーは、盟主様と共に後発か。アスモデウスの件があるからな。
あれが動く様を少し見たい気もするがしょうがあるまい。
私は私の仕事をしよう。
そうして私も空へと飛び立ち、皆と並んで南西へと向かう。
はるか上空から眺める魔導王国の景色はとても綺麗で、思わず見とれてしまう。
森の緑を美しく思うのは私が
しかし見下ろす街に居る人々は腐っている。特に一部の特権階級は。
出来ればこのまま王都に乗り込んで殲滅させてやりたいくらいだ。
【天】から見れば、人のなんと【
そう思わずにはいられない。
やがてティティと合流し、付かず離れず飛行を継続する。
見えてきたのは大河の交わる大地。
二重の防壁に囲まれた円形の街、【混沌の街】カオテッド。
【十剣】の皆はすでに騒ぎ出し、今にも先行しそうなほどだ。
気持ちは分からないでもない。私も思わず顔がにやける。
私の役目は『陽動』という名の『大虐殺』。
さて、どうしてやろうか。
区長邸宅を狙うか、商業組合もいいだろう。防壁を壊すという手もある。
ふっ、これではラセツやガーブの事は言えないな。
少し落ち着いて考え直そう。冷静に虐殺せねば。
未だかつてない大仕事なのだから。
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