カスタム侍女無双~人間最弱の世界に転生した喪服男は能力をいじって最強の侍女ハーレムをつくりたい~
藤原キリオ
第一章 黒の主、世界に降り立つ
01:【黒の主】
■レムリオ
■Dランク組合員 レンジャー
「さすがに混沌の街【カオテッド】の迷宮組合だな」
「ああ、ここまで広いとは思わなかったぜ」
俺が仲間たちと【カオテッド】へとやって来たのは今日の事だ。
四つの国にまたがる大迷宮を中心に栄える街。
それぞれの国が領土を主張した為に中立である迷宮協会が迷宮の入口である中央区を治めるという異色の街。
四か国の文化と人種、宗教が入り混じったまさに″混沌の街″だ。
大迷宮にふさわしく、そして中央区を治めるにふさわしく、この街の迷宮組合は建物がデカイ。
受付ホールには組合員が多いし、列を成すカウンターの受付嬢も余所じゃ考えられないほど多い。
ホールの奥には昼間から酒を飲む組合員がたむろする酒場スペースもある。
俺たちはまずは腰を据えようと酒場で飲み食いする事にした。
「おっ、初めて見る顔だな。どっかから来たのかい?」
近くで飲んでいたらしい先輩組合員の男性に声をかけられた。
酔って絡んでいるというわけではなく、単に興味本位らしい。
俺たちは地元で五年ほど組合員として迷宮に挑戦し続け、一念発起してこの【カオテッド】へとやって来たのだ。
この五年でランクもDまで上がり、探索のノウハウも身につけた。
これまでに死や大怪我に繋がるようなヘマもしていない。
大迷宮が油断ならないと分かってはいるが、それでも自信を持って来たのは事実。
それを幾分か恐縮しつつ、自己紹介と共に先輩組合員の男に伝えた。
「ハハッ、いい意気込みだ。やっぱ若いのはそうでなくっちゃいけねえ。野心と謙虚さ、大胆さと慎重さ、この辺を併せ持ってるやつが生き残るんだ。迷宮に挑むってのはそういう事だろ……おっと説教臭くなっちまったな、すまんすまん」
随分と気風が良い男だった。こうした先輩の助言は素直にありがたい。
色々とこの街について聞いてみるのもいいかもしれない、そう思った矢先だった。
―――ザワッ
組合の中が一瞬ざわつく。何か緊張感に包まれるような空気を感じた。
なんだ? と仲間たちと顔を見合わせると、先輩組合員の男が言った。
「あー、気にするな。ここじゃいつもの事さ」
しかめっ面で親指を組合の入口方向へと向けている。
何が原因なのかと覗いて見れば、そこには少し異様な光景があったのだ。
一人の男と五人の女。それはいい。
男はシャツが白い以外は全てが″黒″。服も髪も瞳まで黒い、外見は
その服もどこかの貴族のような服で、とても迷宮組合に相応しい恰好とは言えない。
少なくとも鎧やローブなどではないのだから組合員ではなく依頼主だろう。
しかし
さらに五人の女は全てメイドらしいが、これもまたおかしい。
種族は
メイドに武器を持たせるというのも変だが、そのメイドたちが
「なんなんだ、あいつらは」
仲間の呟きが耳に入る。思う事は皆同じようだ。
理解できない事に頭を捻っていると、すぐにやつらが居る入口から大声が聞こえた。
「おいおい!
大柄な
そりゃ
しかし俺の隣に居る先輩組合員は、頭を抱え「あー」と唸っている。
「なーにいっちょまえにメイドなんか連れまわしてんだよ! てめえが飼われる立場だろうが! おっ、よく見りゃなかなかの美人じゃねえか!
……が、実際に掴まれる事はなかった。
突然、
おそらく
そして女の何倍の体重なのかも分からない大柄な
加えて、
しかし目の前で起こったのは、その概念が覆されるような光景。
俺は幻でも見ているのか、そう自分の頭を心配してしまうのはおかしい事なのだろうか。
吹き飛ばされた
しかしそれも結局は
どれも一瞬。そして吹き飛ばされた連中は気絶しているのかピクリともしない。
そんな異常な攻防の横で、
どうでもいい事のように。そしてメイドたちが片付けるのを分かっていたかのように。
組合の中に居る組合員たちも「あーあ」と呟くだけで、
まるで日常風景。当たり前の事として受け入れていた。
一方で非日常を存分に味わっている俺たちに、先輩組合員の男が話しかける。
「あの
それは
つまりは
「いいか、お前ら。この【カオテッド】は他の土地とは訳が違う。そもそも一つの街に四つの国と組合の自治区があるんだから違ってて当然なんだがな。余所とルールが違うとこだってあるし、今まで当たり前だと思っていた感覚が通用しねえなんて事だって
先ほどまで飲んでいた酒などすっかり冷めたような真剣な顔つきで、先輩冒険者は俺たちを見回す。
「その中の一つが、あの男だ。あの男とメイドたちには絶対に手を出すな。これは組合員の先輩としてもそうだが、この街で暮らす先達の一人として忠告しておく。いいか? やつらには極力近づくな。馬鹿にするな。手を出すな。これはここの組合員なら誰でも知ってる
それは先輩としての″助言″ではなく、本当の意味での″忠告″だった。
少なくとも俺にはそう感じられた。本気で言われていると。
そんなピリッとした空気に耐えかねた俺の仲間の一人が先輩に聞いた。
「あ、あの……あいつは一体……」
「ただの組合員さ。あの男もメイドたちもな」
その言葉に俺たち全員の目が開かれた。組合員だって?
だってそうだろう? あいつらは武器をもっちゃいるが、着ているのは鎧でもローブでもない、貴族服とメイド服だ。
それで迷宮に潜っているっていうのか?
おまけに
もちろんさっき
「信じられねえのは無理もねえよ。ただ、そう思って突っかかっていったヤツは今まで全員あの
先輩の男は少しニヤリと笑って言葉を繋げた。
「―――【黒の主】にはな」
この街に来て初めての教訓。【黒の主】には手を出すな。
やつらの危険性を初日にして思い知ったのだ。
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