第63話
「これから、ヴァリドー家では魔物部隊を作るつもりだ。こちらにいる兵士たちとともに魔物たちと戦ってほしい」
『ガウ!』
「もしも、戦ってくれるなら約束通り、毎日美味しい肉を提供しよう!」
『ガウ!!』
嬉しそうにハイウルフたちが尻尾を振り、雄叫びを上げる。
……とりあえず、大丈夫そうだな。
ハイウルフたちのテンションが上がっていることを確認した俺は、あとはルーフたちに任せることにした。
「ルーフ。それじゃあ、ここでのマナー含めて色々教えてやってくれ」
「了解だ」
ルーフはこくりと頷いてから歩き出す。
兵力を一気に上げるのは難しい。優秀な兵士はなかなか集まらないし、時間も金もかかる。
だが、ハイウルフたちならそれなりの実力があるし、何よりコストもそこまでかからない。
……まあ、初期投資として、魔物たちを管理する厩舎や世話をする人たちが必要になるのが、世話係には、イナーシアを助けた時に一緒にいたアリアナ、ミーシーが名乗りを上げてくれている。
あと、ゲーリングが動物好きなので、三人を中心に行っていって貰えばいいと思っている。
まあ、ゲーリングもここ最近の訓練のおかげもあって、第二層の魔物も楽々倒せるようになっているので、一戦力として期待はしているのだが、魔物部隊の隊長などをお願いするということでもいいだろう。
とりあえず、現状戦力の底上げにはなるだろうし、悪くはないだろう。
朝の訓練を終えた俺は、朝食を頂いたあと仕事場へと向かう。
とりあえず戦力は整えた。
あとは、領地運営関係の仕事も始めていかないとな。
領主になった俺の仕事は色々とあるのだが、一番はやはり領地運営が開始できるという点だ。
これはもちろんゲームでもできる。
俺一人ですべて管理しているわけではなく、部下たちが基本的には管理し、俺が方針を決めるだけだ。
いわゆるシミュレーションゲームの要素を取り入れた部分になる。
兵を募集したり、兵の食糧を管理したり,税金関係の回収割合を考えたりだ。
ゲームと違って、設定してあとは任せるというのは変わらないが、ゲームのように数字を弄って指示を出すわけではなく、言葉でのやりとりなどが増えるくらいだな、違いは。
俺の役目は軍事、農業、商業、工業の四つを管理する管理官に指示を出せばいい。
各分野同士で、他の分野に重なる部分もあるため、軍事だけをひたすら強化していっても、兵士たちの食糧や武器が手に入らないなどといった問題も出てくるので、そこを領地の土地柄や規模などに合わせながら調整するだけだ。
ただまあ、いかんせん数が多い。
……管理するのがヴァリドールだけならいいのだが、このヴァリドー領内には部下の貴族たちに代理で任せている領地がいくつもある。
昔に与えられたヴァリドー領が非常に大きかったので、自身に近しい立場の貴族に領地の管理を任せているという感じだ。
例えるなら、今の俺の立場は県知事のようなもので部下たちは、市区町村の代表者たち……という感じだ。
そういうわけで、非常に面倒な立場にいるのは事実だ。
でも、まあ……せっかく育ち始めた部下たちを大事にしたいという気持ちもあったから俺は領主になった。
……第一、今後育った領地があるというのは、ハッピーエンドを迎えるためにも必要だ。
物語が片付いたあとの世界で、のんびりスローライフを送るためにも、頑張らないとな。
いずれ、領の管理を任せている貴族たちにも挨拶が必要だろう。
ただ、な。歓迎はあまりされないだろう。
俺の父が自分に従うものたちや自分のイエスマン以外は置いていなかった。
類は友を呼ぶ、ということで悪役貴族のような連中が多いのだ。
かといって、一方的にクビにするわけにもいかない。
一方的に変えれば俺への不満もたまっていき、面倒事が増えるかもしれない。
今自分に忠誠を誓っている人も、不信感を持つようになって、最悪内戦みたいな状態になるかもそいれない。
かといって、放置しておけばそれはそれであちこちから不満も出てくる。
俺の考えを理解させ、今の俺のやり方に納得してもらうことが一番だが……まあ、うまくやっても不満は出るだろうな。
めんどくせぇ。やばい貴族たちを全員、空間魔法で亜空間に飛ばしてやりたいものだ。
―――――――――――
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
楽しかった! 続きが気になる! という方は☆☆☆やブクマをしていただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます