異世界帰りの荷物持ちおっさんは探索系アイドルに狙われた!?〜現代ダンジョンで美少女配信者を助けたら「私のこと好きでしょ」と勘違いされ、もう探索どころではありません〜

冬ノゆきね

1章 帰還したおっさんと現代ダンジョン〈謎の美少女アイドルと遭遇!〉

プロローグ

 まずは自己紹介をしよう。


 俺の名前は白峰タケル。異世界転移をしてからというものかれこれ15年ほどになるだろうか。

 勇者としてではなく、単に勇者パーティーの荷物持ちとして異世界に転移したのは。


 だけど勇者パーティー、いや仲間には大変世話になった。

 

 魔王を倒した時もそうだったが、歳のせいで反射神経や運動機能は若い時に比べて衰えすぐに疲れを感じてしまう。


 因みにそんな俺の年齢は今年で30半ばになる。


 まだまだ若いじゃねぇかなんて罵声が飛んでくるのもわからんでもない。

 しかしだ、どう考えても20代の時に比べると俺もおっさんの仲間入りかとつくづく感じてしまうわけだ。


 しかしそんな俺でも勇者パーティーに同行したという功績で異世界では英雄として崇められる生活をしていた。

 そんな生活も決して悪くはなかった。だが、絶対的な悪がこの世界に存在しなくなった今、勇者パーティーは強大な力を持つ化け物として扱われるようになったというわけだ。

 

 そんな世界でも一生を遂げる、そうも考えた。


 なぜならこんな役立たずの荷物持ちでも仲間は普段から優しく接してくれたからだ。もちろん衝突することもあった。


 しかし次の日には仲の良い元通りの状態。色んな為になる情報教えてくれたりもした。

 時間がある時には剣の稽古に付き合ってくれたこともあった。魔法に関しては俺自身に才がなかったのもあって習得できなかったが……。


 それでも最後まで熱心に特訓を付き合ってくれた良い仲間たちだ。

 皆さんに出会えて俺は本当に良かったのかもしれない。今では本当にそう思う。


 そして別れの日。

 皆さんが悲しそうに笑い俺を見つめている。


「タケル元気でね。私は一生あなたを忘れないわ」

「おっさんまたな」

「いつか再開できることお祈りしていますわ」


 そんな別れの言葉に心を打たれた。 

 俺は涙を堪えながら、


「またいつか皆さんと再会できると嬉しいな。勇者クレア様、賢者ラドフ様、それにネコネちゃんも」


 これまで苦難を幾度も乗り越え、笑い合った日々。そんな日々を共にした皆さんを俺は決して忘れることはないだろう。生を終えるまで、決して。

 それだけ最後に見送りに来てくれた3人は俺にとってかけがえのない存在だからだ。


 俺は最後に大きく手を振った。

 彼女らに背を向けると、ひび割れた次元の狭間に手を伸ばす。決して振り返りはしない。


 これ以上、悲しみを大きくするのは、お互いにとって良くないことだと理解していた。

 新たに歩み始めた道、皆さんそれぞれまた辛いことも出てくるだろう。だがしかし、高い壁を何度も乗り越えて来た皆さんならきっと……。

 

 眩い光が俺を優しく包み込む。

 そして意識は次第に遠のいて行ったのだ。


――――――――

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