第28話 【幸太】恋人つなぎ

ジリジリと照りつける太陽の光が眩しい。海へ向かう車の中で、シティポップを流しながら、俺とひなは色々な話をした。


それにしても、歓迎会のあと、ひなが奏多と行動していたとは、まったく予想外だった。

定食屋で知り合ったんだろうか。

まさか奏多のやつも、ひなを狙っていたとは。


妬かないわけでもないが、俺と奏多ではタイプが違いすぎる。奏多はひなのタイプじゃなさそうだし、同僚として遊んだんだろう。


いずれにしても、奏多はもはや山本さんとデきてるし、ひなは途中から神山部長が来て最高に面白かったと、その話を思い出しては爆笑しているから、奏多とのことは心配しなくてもよさそうだ。


窓を開けて海沿いを走ると、磯の香りが広がった。


「懐かしいな。俺んち、昔海の近くでさ。」


「そうだったんですね!親が海のお仕事で、とかですか?」


「親父が漁師だったんだけど、おれが小さい時に亡くなってさ。もともと、漁に出たらしばらく帰ってこない親父だったから、あんま記憶にないんだけどね。」


「‥そうでしたか。。変なこと聞いてすみません」

ひなは申し訳なさそうに目線をおとした。


「別に隠してるわけじゃないし、大丈夫だよ。俺、海を見ると、なんか親父に会えるような気がして懐かしくなるんだ。変だよな。顔もわかんないのに。笑」



ひなは複雑な表情で俺の方を見ている。

暗い話しちゃったな。



「ほら、もうすぐ海が見えるよ。」


トンネルを抜けると、輝くように青い海と空が目の前に広がった。


「すごい、綺麗。。。。」

ひなは光るさざなみにうっとりした。



「このへんで下りよっか。」




海へ向かう下り坂の途中には、あちらこちらに古めかしいラブホテルが点在していた。



ここのところひなの妄想ばかりしている俺は、なんだか急に暑くなって、ポロシャツをパタパタとひっぱって下まで伸ばし、頭を掻いた。


横を見ると、反対側も同じようにラブホが連なる窓の外を、ひなはぼんやりと眺めている。ひなは今、何を思っているんだろう。



「ひなは、彼氏とかいんの?」

半分、いないのを確信しつつ、直球をなげる。


「いないです。。コータさんはいるんですか??」


「いるように見える?」


「わかんない。。」

自信をなくしたのか、ひなは下を向いて急にタメ口になった。


「欲しいけどね。」

そういって、少し恥ずかしくなった俺は窓の外に目をやった。


「コータさんは、どんな人がタイプですか?」



「うーん、、俺のことを理解して受け入れてくれる人かな。ひなは?」




「あったかくて、包容力のある優しい人。、、、、、あと、なんか守ってあげたくなる人」



ひなの中で俺はそれに当てはまってるんだろうか。



少し離れた草むらに車をとめ、海まで歩いた。白いワンピースに麦わら帽をかぶったひなは、ゴツゴツした岩場をサンダルで歩く。

「きゃっ!転びそう!!!」


おれが手を差し出すと、ひなはひょいと岩を飛び越えて、体ごとおれの腕にしがみついてきた。


「コータさん、ありがとう!」

上目遣いな可愛い顔でそう言って、俺にぴったりくっついたひなと、砂浜まで歩いた。

さっきから、ずっと腕に胸があたっているんだが、わざとなんだろうか。

ひなは、意外と積極的なところあるからな。。。


遠くに数組、楽しそうな恋人達の姿が見える。

「なんかすごい、デートっぽい。私達も、外から見たら、カップルに見えてるのかな」

ひなは恥ずかしそうに言った。



俺も何か言葉を返したかったが、うまい言葉が見つからなかった。

つないだ指を絡めて、手にぎゅっと力を入れた。

「そうかもな。」


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