第8話 【陽奈】河川敷でバーベキュー(2)
恵に手を引かれながら、私は小倉さんのもとへつれていかれた。
近くまできたところで、恵は私に言った。
「ほら、あのテントの横で、今火おこししてるの、小倉さんだよ。あの人でしょ?」
後ろ姿しか見えないが、背格好からいってたぶんあの人で間違いないだろう。
そのぐらい、小倉さんはでかい。
「えっ、うん、たぶん‥あ、でももうあの人が小倉さんって名前だってわかったから、いいよ」
「遠慮しないでさ、ほら〜」
おせっかいな恵は、私の背中を押しながら小倉さんの方へ押していく。
「ちょっと‥」
そのとき、不意に小倉さんが振り返って、目が合った。小倉さんは少し驚いた表情をした。
「ひなちゃん、休みの日なのに参加してくれてたんだね。まー、せっかくだし、いっぱい食べていってよ」
「あっ、はい!ありがとうございます!!!」
私は緊張してカチカチになっていたが、小倉さんが気さくに接してくれてよかった。偉そうな女だとか思われていたらどうしようかと心配していたが、どうやら大丈夫そうで安心した。
その場にいた他の社員さんがお酒をおいてくれたので、さりげなく小倉さんと同じテーブルに座ることに成功した。
「ひなちゃんは、バーベキューとかよくやるの?」
炭を追加しながら小倉さんはこちらに目を向けた。
「いえ、私は超インドアなので、家でゲームしたり漫画描いたりするほうが好きです!」
そう真面目に答えると、小倉さんが急にゲラゲラ笑って優しい顔になった。
「意外と、オタクっぽいところあるんだね。うちの会社あってるかもよ。」
「ゲームとか好きな方多いですか?」
「そういうやつばっかりだよ。俺は、漫画というか、絵を描いてるんだけどね。」
「え!絵ですか!?意外です。どんな絵を描かれているんですか?」
「え、うーん、、、、風景とかもだけど、人物画が好きでね。」
「そうなんですね!小倉さんの絵、見てみたいです!」
そう言うと、小倉さんは一瞬真顔になって、私をじっと見た。
「ひなちゃんも、絵描くの好きなら俺のサークルに入って一緒に絵描かない?てか、俺の絵のモデルになってくれない??」
「え!!!!!?????」
「私なんかでよければ、喜んで!!!!」
嬉しさと恥ずかしさで、顔から火が出そうだった。
「んじゃさ、あとで連絡先交換しよ。とりあえず、乾杯するかー」
‥‥小倉さん!?!?これはアプローチと捉えて良いのでしょうか!?
他の社員さんもたくさんいるのに。
小倉さんの自由すぎるノリに振り回されて、若干戸惑いつつも、わたしはテンションが上がりすぎて、乾杯のビールを一気飲みした。
「おぉー!!!ひなちゃん、イケるクチだねぇ!!」
まわりにいたオジサマ達から、歓声があがった。
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