第36話 永遠にも思える痛みの嵐

 ああ、バカだなあ。おれって。こんな怪物、相手にするのが間違いなんだ。


 ――だけど、ロボは一度だって嘘はつかなかった。


 だから、彼女が「必ず戻る」、「必ず勝つ」と言ったなら、それは信じられる。


 信じて、足掻ける。


 おれを頭から引き裂くべく、繰り出されたホッケの爪。


 逆に今、ホッケはおれをナメていた。恐怖させるべく、わざと見えるスピードの攻撃だった。


 だから、おれはそこに自ら飛び込んだ。


「何!?」


 さしものホッケも驚いて目をむく。


 自ら飛び込んだ事で、上手く爪では無く掌に頭が当たり、ホッケがよろめいた。


 稼げた時間なんてほんの数秒。


それでもいい。一秒でも長く、時間を稼いでやる。


「……くだらん真似を。ひと思いに死ぬのが嫌なら、望み通りいたぶってやろう」


 次に繰り出された爪は、当然全く見えなかった。


 ミキサーにでもかけられたかのように、全身を猛スピードで何かが切り裂いていく。裂かれた場所に痛みを感じるより早く、次の場所が切り裂かれ、てんでばらばらな痛覚が脳をシェイクした。


 服はぼろぼろ、全身至る所血まみれになっていく。それでも、懐に隠した握り飯だけは、両手でかばって守り続けた。


 永遠にも思える痛みの嵐。


 それが、突然止まる。


 おれは、自分が倒れる音を聞いた。


 倒れざま、天を見上げるホッケと、夜だというのにやけに明るい空が見えた。


「待たせた」

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