Tip Off!

南 梨香

Prologue.

 全身を電流が駆け巡った。


 綺麗なフォーム、


 吸い込まれるようにゴールに入るボール、


 そのゴールを通るボールの音。


 まるで、体育館全体が魔法にかかったかのようにキラキラと輝いて見えた。


 この人は誰なんだろう……もっとこの人のことを知りたい。


 そう思った。






 ❇︎❇︎❇︎






 私が坂口先輩のことを初めて見たのは、中学1年生のとき。


 友だちに誘われて観に行った、男子バスケットボール・神奈川県大会の決勝戦だった。


 バスケなんて、体育の授業でしたことがあるくらいで、基本的なルールしか知らなかった私。


 そんな私でも、彼は別格だと思った。


 素人の私から見ても分かるくらいだから、本当に彼は凄い人なのだろうと思う。


 その証拠に、坂口先輩は、その年の最優秀選手MVPに輝いた。


 2つも学年が違う上に、中学校も他校だったから、どうやっても知り合うことは難しく思えたけれど、それでも私は坂口先輩のことを諦めることが出来なかった。


 ……それから月日が経ち。


 2年後の中学3年生の夏のこと。


「坂口先輩は明陵高校に通っているらしい」という、今まで不確かだった情報が確信に変わり、私は、明陵めいりょう高校を受験することを決めた。

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