第9話 あれが出たの……!

今日はいよいよ美優がやってくる日。

俺は荷物の運搬を手伝うために車で大石家に来ていた。

幸いにも雨は降っておらず順調に引っ越しができそうだ。


「わざわざごめんね。車出してもらっちゃって」


「いや、別に構わないよ。これくらいは手伝わせてくれ」


既に家具などの大きいものは家に到着しているのであとは美優の日用品だけだ。

なら俺が車を出したほうが手っ取り早いというものである。

先週出番が無いんじゃないかと危惧していたがここで貢献できてよかった。


「これで最後?」


「うん。もし忘れ物があったらまた家も近いし取りに行くから」


「それもそうだな」


家が近いというのは便利なものである。

最後の荷物を積み終えあとは運ぶだけだ。


「拓哉くん。美優を任せたよ」


「何かあったら義両親私たちを頼ってくれていいからね」


「分かりました。それでは今日はこれで失礼します」


義両親に挨拶をし車に乗り込む。

美優は助手席に乗り窓を開けて手を振っていた。

早速車を発進させる。

お義父さんとお義母さんは見えなくなるまで見送ってくれていた。


「今日は荷解きをして買い物に行こうか」


車を運転しながら横目で美優を見て話しかける。


「そうだね。ある程度の家具はあるけど全部は揃ってないもんね」


家具が全部揃っていない理由は俺が美優に引っ越すときは最低限で良いと伝えてあったのだ。

せっかくの同棲だし色々と新調しようと美優と話し合った。

だから決して色々買ってあげることで見栄を張ろうなんて下心は無いのだ。

……決して無いのだ。


「初デート……かな?」


「ああ。初デートだ」


そんなことを話していたら家に到着した。

改めて思うが本当に美優の家と近い。

俺達は車から降り荷物を家に運び始めた───


◇◆◇


少し時間をかけようやく荷物を運び終わった。

俺は流れる汗を拭う。


「ふぅ……ようやく運び終わったな」


「手伝ってくれてありがとね。私はそのまま荷解きしてくるよ」


「そんなに急がなくても少し休んでからでも大丈夫だよ」


「ううん、早く拓哉とデートしたいもん。すぐに終わらせてくるよ」


そう言って美優は自分の部屋へ消えていった。

美優もデートを楽しみにしてくれているとわかって俺のテンションが爆上がりした。


「さて、やることもないし掃除でもしようかな〜」


本当は荷解きも手伝いたいところだけど美優は一人で問題ないと判断したのだろう。

俺達は婚約者だが交際期間が短いから下着など見られたくないものもあるだろうし。


俺は早速玄関の掃除を始めた。

最近あまり掃除してなかったしさっきまで荷物を入れるために開けっぱなしにしていたので砂埃が溜まっていた。

ほうきを使ってさっさと掃いていく。


そのまま5分ほど掃除をしていると……


「きゃあ!!」


「美優!?」


上の階から美優の悲鳴が聞こえてきた。

俺は箒を投げ出して階段を駆け上がり美優の部屋を開ける。


「美優!大丈──ぶっ!?」


「拓哉助けてっ……!あれが……あれが出たの……!」


最後まで言い切る前に美優が抱きついてきた。

美優が指を指す方向を見ると得意という人のほうが少ないであろう黒い虫。

俺ももれなく得意ではないが美優のために殺ってやろうじゃねえか。


「美優。スプレー取ってくるからちょっと待ってて!」


「無理無理無理!怖い!やだ!」


美優は俺の腕をがっちりホールドし固定する。

胸の感触がはっきり分かってしまい別の意味でやばくなってきた。


かと言って無理やり引きはがすわけにもいかない。

仕方なく近くにあった紙を丸め美優をくっつけたまま奴に接近する。

美優は近づいて大丈夫なのだろうかと思ったけど目をつぶって必死にくっついていたため奴の姿は見えなさそうだしそのままにした。


「くらえっ!」


潰れないよう多少手加減しながら奴をぶっ叩く。

確実に弱ったタイミングでトドメの一撃をいれ早急にティッシュでくるみビニール袋にいれる。


「終わったぞ、美優」


「お、終わった……?もういない……?」


美優が恐る恐る俺の背中から離れ顔を出す。

いかにも警戒しています、という顔で周りを確認してもういないことが分かったのか完全に俺から離れた。


「ご、ごめん……取り乱しちゃって……」


「美優って昔から虫苦手だったもんな。気にしなくていいよ」


美優は自分の行動を思い出したのか恥ずかしそうに謝ってくる。

俺は美優が大の虫嫌いだったことを思い出しなんでもないかのように笑って答える。


「それじゃあ俺は掃除に戻るよ。また何かあったら遠慮なく呼んでね」


「わ、分かった……その、拓哉!」


俺はそれだけ言い残して出ていこうとするが美優に呼びかけられた。

何かあったのかと振り返る。


「か、かっこよかったよ……ありがとね」


「お、おう……」


それから少し気まずくなってしまったものの無事に二人は荷解きと掃除を終えた。

準備が完了した二人はいよいよ初デートを迎えるのであった。


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