第65話 帰路
ゴールドゴーレムの残骸を抱えて戻ってきたのだが、二人のリアクションは割と普通。
もっと派手に驚くかと思ったが、もう慣れてきたのかもしれない。
「グレアムさん、お疲れ様です! 流石の戦いっぷりでしたね!」
「あの氷の魔法はなんだったの? 全部のシルバーゴーレムが一気に活動を停止させたよね!?」
「普通の氷魔法だな。複合魔法だから扱いは難しいが、慣れるとかなり便利な魔法だぞ」
「普通では絶対にない! まぁグレアムからしたら普通なんだろうけど」
「ふふ、グレアムさんといると感覚がおかしくなってきますもんね! こうしてあり得ないくらいのゴーレムの残骸の担いでいても、そこまで驚かなくなってますもん」
「……確かに! グレアム相手には愚問かもしれないけど、それを担いで下山するの?」
「もちろんだ」
正直ゴールドゴーレムに関しては、早急に討伐する必要がなかったからな。
山の中の洞窟にいた訳だし、人間を襲いに来るとしても大分先だったはず。
それでも倒したのであれば、そのまま放置せずに有効活用するのが筋というもの。
……まぁ、金欲しさっていうのもあるが。
「私たちもシルバーゴーレムの素材を持ち帰った方がいいんですかね?」
「無理に持ち帰る必要はないと思うが、鞄に入って高く売れそうな部位だけ持って帰ってくれると助かる」
「そう言いますと……目の部分と核周りですかね?」
「よし! さっさと剥ぎ取って帰ろう! ぐずぐずしてると日が暮れちゃう!」
「だな。早く動こう」
野宿をしないためにも、俺達は素早く動いてシルバーゴーレムの剥ぎ取りを行った。
そして、高値のつきそうな部位の回収を終えた俺達は、一刻も早く街に戻れるよう下山を開始。
「二人は来た道を戻って、抜け穴の入口で待っていてくれ。目ぼしい魔物の気配はないから、会敵せずに抜けられると思う」
「……あれ? グレアムさんは一緒に来ないんですか?」
「ゴールドゴーレムの残骸を持ったままじゃ、あの狭い抜け道を通れないからな。俺は崖になっているところを登って脱出する」
「うえっ!? その大荷物を持って登るの!?」
「そう難しいことじゃない。重力魔法を使えば簡単に上から抜けられるからな」
「ちょっと信じられませんが、グレアムさんなら可能なんですもんね……。分かりました! アオイちゃんと共に抜け穴から出た先で待っています!」
「ああ。それじゃまた後で」
二人に一時の別れを告げてから、俺は【
そのまま思い切りジャンプし、上からの脱出を目指す。
足場は不安定だが、踏み外したら氷魔法で足場を作ればいいだけ。
軽快な足取りでどんどんと登っていき、あっという間に抜け出ることができた。
そして、今いる位置は頂上付近。
帰るついでに、行きに見つけた頂上付近を飛行していた魔物を狩ろうとしていたのだが……。
「気配が消えていたのは気づいていたが、やはりもういないか」
俺がゴールドゴーレムを瞬殺したタイミングで、逃げるように立ち去っていった飛行生物。
ゴールドゴーレムと同等の力を持っていて、且つベインが把握していない魔物という時点で倒しておきたかったが、逃げられてしまったらどうしようもない。
陸を進む魔物なら追う選択も取れたのだが、流石に空を飛んで逃げたものを追うのは不可能。
ゴールドゴーレムではなく、先にこっちの魔物を倒すべきだったと多少後悔しつつも、キッパリと諦めて二人の待つ抜け道の入口に向かった。
「はえー!? なんでグレアムさんが先にいるんですか!?」
「瞬間移動でもしてないとおかしいでしょ!」
「登って降りただけだ。それより道中の魔物とかは大丈夫だったか?」
「はい。大丈夫でした! あんな危険なルートを進んで私達の心配って……」
「大丈夫だったなら良かった。もうすぐ夕方だし、早いところ下山しよう。山の中で日が暮れてしまうのは嫌だ」
ここからはただ下山するだけ。
二人も体力的にギリギリだろうし、なるべく最短ルートで魔物と出会わない道を選んで帰ろう。
高く積み上げたゴールドゴーレムの残骸を持っていて、唯一残っている腕が塞がっているため、飛ばす斬撃が使えないからな。
ここでも片腕の弊害を感じながら、俺達は来た道を引き返して帰路についた。
抜け道を出てから約七時間。
辺りはすっかり真っ暗になってしまったが、何とかビオダスダールの街まで帰ってこられた。
「はぁー、やっと着いたー。過去一で大変だったかもしれません」
「二人共、本当にお疲れ様。明日は完全休養だな」
「良かったー! グレアムのことだから、明日は依頼をこなすとか言い出すかと思った!」
「そこまで鬼じゃない。それにしても……このゴールドゴーレムの残骸はどこに置こうか」
「あー、そういえばギルド長は街にいないんでしたね! でも、冒険者ギルドに持っていけば預かってくれるんじゃないですか?」
ギルド長がいれば、そのまま預かってくれたのだろうが、持っていって大丈夫か少し心配。
まぁ何度か訪れているお陰で顔を知っているギルド職員もいるし、持っていっても大丈夫か。
「夜遅くなって良かったですね。ゴールドゴーレムを持ったまま街に入ったら、きっと大騒ぎになってましたよ!」
「確かに……。そこまでは考えていなかったが、結果として夜遅くなったのは正解だったか」
そんな会話をしながら街に戻り、色々と驚かれながらも俺はゴールドゴーレムの残骸を冒険者ギルドに預けてから、軽い食事を買って宿に戻ったのだった。
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