第38話

それからというもの、私は彼とキスしているのです。

「ちゅっ、んんっ、はぁっ、んぅ、んんんん」

何度も、何度も、執拗に、舌を入れてくるんです。

そして、やっと離してくれたと思ったら、今度は首筋に吸い付いてきます。

時折歯を立てられて、痛みに身を捩らせると、満足そうに微笑むのです。

この人は、少しおかしいのかもしれないと思いました。

でも、そんなことはどうでも良かったんです。

だって、私は彼のことが好きだから。

彼が求めているのであれば、どんなことでもしてあげたいと思ったから。

「そろそろ寝ませんか?」

そう提案すると、彼は少し考えてから了承してくれました。

私はベッドに入り、布団を被ります。

彼も隣に入ってきました。

そして、ぎゅっと抱きしめられます。

彼の体温を感じながら目を閉じると、すぐに眠りに落ちていきました。

翌朝、目を覚ますと、隣には誰もいませんでした。

慌てて起き上がると、バスルームからシャワーの音が聞こえてきます。

どうやら、先に起きていたようです。

しばらくすると、彼が出てきました。

すでに着替えも済ませているようです。

私はまだパジャマ姿でした。

急いで着替えなければなりません。

手早く着替えを済ませ、ルームサービスを頼みます。

料理が届くまでの間、二人でソファに座って待ちます。

「おはようございます」

「おはよう」

他愛もない会話を交わします。

そんなやり取りをしているうちに、注文した料理が届きました。

一緒に朝食をとりながら、今日の予定について話し合います。

今日は、観光地巡りをすることになりました。

朝食を食べ終えた後、ホテルをチェックアウトして、外に出ます。

それから、タクシーに乗って、目的地へと向かいます。

車窓から見える景色を眺めているうちに、目的の場所に到着しました。

そこは、高級ホテルの最上階にあるレストランでした。

店内に入ると、すぐにウェイターがやってきて案内してくれます。

案内された席に座り、メニュー表を受け取ります。

どれも美味しそうなものばかりで迷ってしまいます。

結局、私はイタリアンセットを注文しました。

彼はハンバーグセットを注文していました。

料理が運ばれてくるまでの間、他愛もない会話を交わします。

料理が運ばれてくると、さっそく食べ始めます。

一口食べるごとに、美味しさに感動します。

さすが一流シェフが腕を振るっただけのことはあります。

あっという間に完食してしまいました。

会計を済ませた後、次の観光スポットに向かうべく、駅に向かって歩き出しました。

電車に揺られること一時間、目的地に到着です。

そこは、有名な神社でした。

鳥居をくぐって中へ入ると、多くの参拝客の姿が目に入ります。

参道に沿って並ぶ出店を見て回るだけでも楽しめそうでした。

一通り見て回った後、本殿の前でお参りすることにしました。

賽銭箱の前に立ち、二礼二拍手一礼をしてから、願い事を心の中で唱えます。

顔を上げた時、隣で同じように祈っていたはずの彼の姿が見えないことに気付き、

周りを見回してみると、少し離れた場所に立っている姿を発見することができました。

そちらの方へ歩いて行くと、こちらに気付いたようで、こちらに向かって手を振っています。

私も手を振り返すと、こちらへ駆け寄ってきました。

そのまま、手を握られたので驚きながらも握り返します。

すると、嬉しそうに微笑んでくれるので、こちらまで嬉しくなりました。

その後、境内を巡っているうちに日が暮れてきたので、帰ることにしました。

駅までの道を歩いている間、特に会話もなく、黙々と歩を進めていました。

その沈黙を破ったのは、彼の方でした。

突然立ち止まったかと思うと、真剣な表情でこちらを見つめてきます。

どうしたんだろうと思いながら見つめ返していると、彼は意を決したように口を開きました。

私は驚きのあまり固まってしまいました。

まさか、告白されるとは思っていなかったので、頭が真っ白になってしまいます。

しかし、すぐに冷静さを取り戻し、彼の目を見つめ返します。

そして、深呼吸をしてから、ゆっくりと口を開きました。

彼は一瞬驚いたような表情を浮かべましたが、すぐに笑顔になりました。

私は恥ずかしさのあまり俯いてしまいました。

それから、彼と付き合うことになりました。

初めてのデートは映画館でした。

上映中は暗いので、手を繋いだり、肩を寄せ合ったりしながら過ごしました。

映画が終わると、一緒に食事をして、その後は公園を散歩しました。

帰り際、彼はキスをしてきました。

最初は軽く触れるだけのキスでしたが、次第に激しくなっていき、舌を絡めてきました。

私は抵抗することなく受け入れます。

やがて唇が離れると、彼は満足そうに微笑みました。

それからというもの、毎日のようにデートを重ねていきました。

デートの最後には必ずキスをするのが恒例となっていました。

そんなある日のことでした。

いつものようにキスをしている最中、突然、口の中に異物が入り込んできたのです。

驚いて吐き出そうとすると、強引に押し込まれてしまいました。

苦しさのあまり涙目になっていると、ようやく解放されると同時に、咳き込んでしまいました。

息を整えてから、抗議の意味を込めて睨みつけますが、彼は全く動じる様子はありません。

それどころか、余裕たっぷりといった様子で、不敵な笑みを浮かべています。

一体何を考えているのかわかりませんが、これ以上追求しても無駄だろうと思い、諦めることにしました。

その後も、何度か同じようなことがあったものの、特に害はないと判断し、されるがままになっていました。

しかし、それが間違いだったことに気付かされました。

その日は、いつもより長く、ねちっこく責められ続け、最後には腰が抜けてしまって立てなくなってしまいました。

それ以来、行為が終わった後も、しばらくは余韻に浸っている状態が続くようになってしまったのです。

そのせいで、日常生活に支障が出るほどになってしまっています。

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