第9話 エルフが書いたえっちなラブコメは人間にも大ヒット
「うふふ。そんなに
と、一人の女子生徒がリリアンヌの向かいに座る。
のほほんとした雰囲気のエルフだ。
「あ。お母さん。家にいないと思ったら、学校に来てたんですね」
「え!? ロザリアのお母さん!? でも制服……」
「は~~い、ロザリアのお母さんで~~す。ぴーすぴーす」
「お母さんに限らず、何歳になっても卒業しないまま生徒をしてるエルフは沢山いますよ。かく言う私も、この学校ができた五十年前からずっと生徒をしています」
「だって~~、制服可愛いもんね~~」
「ねー」
ロザリアは母親と笑い合う。
「そ、そっか、エルフはほとんど老化しないから、いつまでも制服が似合う……羨ましい! じゃなくて、いつまでも学習意欲があって偉い! ところで
「実は、えっちなラブコメシリーズ。お母さんが書いたんですよ。文章も挿絵も」
「ええっ? 作者! あ、握手してください……!」
「あら~~。最近はそういう反応してくれる人いないから嬉しいわ~~」
「だって私、色んな人に会ったけど、小説家ってのは初めてで……どうやったら、あんな色々思いつくの?」
「うふふ。実は半分くらい実話なのよ~~」
「なるほど……ああいう風にしてロザリアが生まれたってわけね……」
「ちょっと。そういう話のもって行き方はやめてください。恥ずかしいじゃないですか。っていうか実話ベースだったんですか。私も初耳です」
つまりロザリアは、両親の馴れそめとか、子作りの様子とか、学校中どころか村中に知られていたわけだ。
今すぐこの本を発禁にしてやりたい。
「それにしても、この村……ウィスプンド村っていうんだっけ? 技術レベルだけじゃなく、文化レベルの高さにも驚いたわ。色んな本があるし、服はオシャレだし。私の国と貿易したら、お互いのためになると思うんだけど……」
リリアンヌはロザリアに媚びるような視線を向けてくる。
「私は魔法ブームの仕掛け人だという自負はありますけど、なんの権限もない一エルフなので。そういう政治的なことは村長と話し合ってください。あとで紹介します」
「やったぁ! これで王都のみんなにも、えっちなラブコメシリーズを布教できるわね!」
「そ、それはちょっとご勘弁を……」
まあ、貿易するにしても、そう簡単にはいかないだろう。
何百年も交流がなかった種族だ。
使節団を何度か送り合って、何年もかけて互いの信頼を築きあげ、危険はないというイメージが一般市民に浸透しなければ、活発な人の往来は望めない。
ロザリアはそう思っていたのだが――。
半年もしないうちに、エルフと人間は互いの領域を気軽に行き来するようになった。
村の外から来る者のための宿屋が整備されただけでなく、新たな定住者のために、貸賃アパートまで作られた。
ウィスプンド村で作られた商品が出荷され、ラギステル王国の豊富な資源が流れ込んでくる。
そしてロザリアの母が書いた小説は、ラギステル王国全土で大ヒット中らしい。
「どうして……」
「面白いからでしょ。いいじゃないの。あなたのお母さんが評価されてるんだから」
そう答えるのは、魔法学校の制服に身を包んだリリアンヌだ。
彼女は国王たる父親の許可を得て、今日から正式にウィスプンド村で暮らすのだ。
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