第116話 事後処理

はーい、スーパー事後処理ターイム。


冒険者ギルドの職員に、冒険者が倒したモンスターの回収を任せる。


え?熱いバトルの様子?


そんなんどうでもいいでしょ。完全に興味がない。


プロ野球選手が子供の草野球見てもそこまで面白いとは感じないだろ?


つまりそう言うことだ。


冒険者連中はやり切った顔をしているが、俺からすれば、デコピン一発で細胞一つ残さずに消滅させられるケルベロスごときにここまで手古摺らされていた冒険者連中の様子は、見ても何も面白くなかった。


それどころか、むしろ滑稽とすら思えた。


まあ、ティータイムに見る三流ドラマくらいの価値はあったかな?


いや、これは、目がチカチカしそうな原色のクリームがべっとり乗っかったドーナツをバケツで食べながら、一ガロンのコーラを喉に流し込むクソデブアメリカ人が見る三流ドラマだろう。


俺達のような高貴な身分のティータイムは、イギリスの貴族のように、馬鹿丁寧でお高くとまっているからな!


ティータイムは各地でやることなすこと全部違うからめんどくせぇよな。


イギリスはお高くとまったティータイムをやるが、日本人は茶道とか言うよくわからんことやるし、インド人はアホほど甘い茶を淹れる。


「じゃあティータイムバトルしようぜ!俺がテメーらをぶっ殺したら、コーラでバケツドーナツの勝ちな!」


「ダイエットコーラはぶち殺していいよ。アレ不味いんだよね」


「人工甘味料は何故だか、不自然な甘さが鼻につくわね」


「ガムとかだと気にならないんだけどねえ」


「キリシッシュのハイパークールブラックが最強なんだよな」


「……煙草で良くないだろうか?」


「ヤニカスさんは死んでくり〜。ドイツのヤニカス共はそこら中で吸いやがるからよ〜、携帯灰皿持ち歩けってんだよな」


「む……、すまない……」


「ってか、煙草ってそんなに美味しいかな?僕、臭いだけで美味しいと思ったことないよアレ」


「フン、ガキが……。ママのオッパイでも吸ってなさい」


「煙よりかは母乳の方がマシだろうね」


俺達、チームクズは、いつも通り馬鹿話しながら事後処理を始めた。


まず、冒険者ギルドに指示をして、ケルベロス他モンスターの素材回収。


冒険者への報酬の受け渡し。


そして、各種データのまとめ作業。


データってのはアレだ。


今回、流出現象が起きた領域を奪還する依頼だったんだが、それは冒険者ギルド初めての大仕事だったんだよ。


だから、今回のデータ……、例えば困ったこととか、良かったこととか、そう言ったデータを集めて、次回の領域奪還依頼に備えようってことだ。


いやー、多分次もあるでしょ。


依頼主はアメリカか、それともロシアか。


欧州って線もあるな。


中国とかは難しそうだ。あそこは今、政府が分裂してるからな。


中東、アフリカ、南米辺りも無理だろうな。あの辺は内乱からの滅亡ルートだった。


まあとにかく、十中八九、次も同じような依頼が来るはずだ。


その時に備えて、色々なデータを収集しておくべきだろう。


そうじゃなくても、冒険者の大規模レイドバトルについての資料ができるのは良いことだ。


この資料から、大規模レイドバトルの定石のようなものを探っていけたら良いなとは思う。


例えば、古代の戦士達は、戦列歩兵やらパイク兵やら騎兵やら、そう言った戦術の基礎を編み出しただろ?


それと同じように、冒険者の集団での戦い方の基礎、のようなものを探っていけたら良いなと考えてるんだが……。


まあ、それは俺がやるべきことじゃないな。


冒険者ギルドの職員に丸投げだ。


俺は株主であって、提案と命令はするが自ら働くことはしない。


サボりとかそう言うんじゃなくて、株主が社員の仕事にチャチャを入れるのは、現場で仕事をしている社員への侮辱というか……、完全に邪魔なんだよな。


現在の俺はほぼ全能であるからして、仕事そのものはできるのだが、だからと言ってやらなきゃいけない訳でもないし。


まあ、なんだ。


結局、俺が株主としていくつかの会社を動かすのが結局一番世の中の為になるんだよ。ついでに、俺も実労働時間が減って万々歳。


みんなで幸せになろうよ。




で、事の顛末だが。


アメリカは、超極大の魔石鉱脈を得た。


新たな産業、しかもエネルギー資源の採掘という、国力と直接結びつくそれに、国民は沸いたそうだ。


ただでさえ、アメリカは普段から失業率についてや、違法難民がアメリカ人から雇用を奪う事など、仕事について悩まされてきたからな。


今回の世界崩壊は、失業率なんて90%を余裕で超える事態だった……。


それは、アメリカ最大の危機と言っても過言ではないだろう。いや、他の国からしてもそうだろうが……。


まあなんにせよ、『資源』と『雇用』を大量に作り出せたのは正に僥倖。


政府は早速、ヒューストンに軍隊を駐留させ、更に小規模な街を作り始めたそうだ。


俺は普段、アメリカは、アーニーのいる街である『ハリアルシティ』にしか行かない。


だから知らなかったんだが、現在のアメリカの暫定首都であるデトロイトは、それはもう酷いらしい。


どう酷いのか?


うーん……、イメージが湧かないから例えようがないが、『国土に核ミサイルを複数落とされた敗戦国』みたいな感じかねえ?


産業もインフラも破壊されて仕事がなく、怪我人など使えない人間ばかりが残された街に集まり、子供達は飢えて木の根を齧るくらいの貧困……。


ブクブクに太った肥満民族であるアメリカ人が、見る影もなくガリガリに痩せてるんだ。


分かるか?アメリカ人ってのは、ケチャップをぶっかければ野菜を食べたことになるとか、そんなことを考えているデブだぞ?


それが今や、アフリカの恵まれない子供達のように痩せ細っている……。


これがかつて栄華を誇ったあの米帝様か……。


同情で涙がちょちょぎれそうだな!


冗談はさておき、アメリカに超大規模な雇用ができた。


魔石は、流石に黄金ほど価値があるものではないが、それでも小指の先ほどで1ドルくらいの価値はある訳で。


しかも現在は、全世界の機械の動力源の半分ほどは魔石になっている。


魔石は、ペットモンスターの餌、燃料、ポーションの原料から魔導具魔装具の材料まで、非常に幅広く活用される重要なエネルギー資源だ。


つまり、幾らあっても足りない。


要するに、何が起きたか?


ゴールドラッシュだ。


魔石鉱脈に、大量のアメリカ人が群がる。


そして、人が集まるところには商人やら何やらが寄ってくる。


こうして、まだ建物なんでロクにできていないヒューストンには、ごく大量のアメリカ人が集まっていた……。

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