ラスボス系悪役令嬢に転生した俺、気ままに魔剣を収集するつもりがヒロインたちに言い寄られて困ってます

海夏世もみじ(カエデウマ)

第1話

 ――……痛い。

 思考が働き始めた瞬間からそんなことを考えていた。


「う、うーん……?」


 重い瞼を開けると、知らない天井が目に入る。大きくあくびをしながら体を起こすが、知らない天井だけでなく、知らない部屋もトッピングされた。

 大量の本が積まれており、少し薄暗い室内。ここにゲーム機やテレビ、漫画などは一切なく、代わりにメイドと執事らしき人物がいた。


「だっ、誰だテメェら!?」

「お嬢様! お目覚めになられましたか! 爺やは心配で心配で……」

「お嬢様ってなんだ!? 返答次第では殴るぜ不法侵入者ども!!」

「や、やはり意識が混濁しているようですな……。本の角で頭をぶつけたから……」


 俺のことを「お嬢様」だとかぬかす訳の分からんジジイやメイドがいて、何が何だか分からない状況だ。

 そんな時、ふと鏡に映る自分の姿が見える。平凡な男子高校生の姿が映っているかと思いきや……。


「は……? どうなってんだよこれ……」


 鏡に映るのはごく普通の男子高校生である青天目なばため優希ゆうき……ではなかった。

 腰あたりまで伸びるサラサラの赤髪に宝石のように煌めく青い瞳。まだ幼いながらも男を魅了してしまいそうな美貌を持つ少女がそこにはいたのだ。


 妙に見覚えがあると思った瞬間、脳に大量の情報が流れ込んできた。そこから導き出される答えは――


「あ……〝光と骸のシンフォニア〟のだ」


 〝光と骸のシンフォニア〟。

 それは俺がどハマりしていたRPGゲームである。勇者となって学園で力をつけ、魔王を討伐するというシンプルなゲームだ。しかし散りばめられた伏線や自由な戦闘などが評価され、人気のゲームとなった。


 そんなゲームの中でも一番印象に残るキャラクターが、この鏡に映る少女――ウシュティア・フラムだ。

 こいつは主人公にちょっかいを出したり面倒事に巻き込んだりする、所謂〝悪役令嬢〟とやらだ。無駄にビジュが良いことなどで人気があるが、一応魔王に乗っ取られてラスボスとなるキャラである。


「(そういえば声が高いし体もずいぶん貧弱だ……。夢にしてはリアル過ぎるし、これは俗に言うってやつなのか!?)」


 仮にそうなのだとしたら、前世の俺は死んだのか? 弟や妹たちが心配だが……まぁあいつらはしっかりしてるし大丈夫か!

 優希おれの記憶はびっくりするくらい鮮明にある。だと言うのに、が全く思い出せない。


 ……まぁ、いずれ思い出せるだろ。気楽に行こう。


「あの……お嬢様?」


 さて、これからどうしようかな。

 一応悪役令嬢のウシュティアに転生したわけだ。こいつは部屋に引きこもって本を漁り、それ以外は主人公らにちょっかいをかける奴なんだが……。


「(それってクソつまんねぇよなぁ……)」


 俺はこのゲームの魔剣を集めることに専念していた。ウシュティア専用の魔剣とかがあって嫉妬してたが、その本人に俺が入ったわけだ。

 集めるしかない、魔剣をッ!

 キャラ設定? 悪役?? 関係ないね。俺は私利私欲のためにこの世界を満喫するぜ!!


「よし、大体把握できた」

「治癒魔術使いを呼ばなくても大丈夫ですか……?」

「ああ! 面倒見てくれてありがとな!」


 ニッコニコでお礼を言うが、ウシュティア元の体は常にポーカーフェイスだったからか、少し動かしただけで筋肉痛になりそうだ。

 執事やメイドらはそんな俺を見るや否や、口をあんぐりと上げて驚きを隠せない様子でいた。


「あ、あのウシュティアお嬢様がお礼を……!!?」

「笑顔初めて見ました……」

「あばばばば!」

「天変地異不可避」

「こ、今宵は槍が降りますっ!」


 こいつら好き放題言うな……。一応俺に仕えているんだよな? いや、仕えているから俺の言動がおかしいことに驚いてんのか。


 さて、そんじゃあ魔剣を集めるために、早速色々と準備を始めますか!



[あとがき]


流行りに乗って悪役転生書いてみるぜ!

見切り発車ですが対よろ。

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