第8話-2

追憶の焦点

第3章 皇女の守護者


2.皇女の母


「今の仕事…お水の世界ではもう働かないわ」

「じゃあ、どうやって生きるつもりだ?」

「それはつまり…結婚するってことか?」

「そうよ」

 優美の結婚相手は言うまでもない。


「僕と結婚したいのか?」

「ええ…家事は苦手だけど、ちゃんと覚えます、あなたとなら上手くやっていけそうだわ」

「………」

 新室は優美の話に耳を傾けるが、何故か反応が薄かった。

「返事は待った方が良い?」

「…いいや、答えは出ている、悪いが君とは結婚できない」

 新室はあっさりと断言して、優美を失望させた。


「どうして…何か理由が?」

 優美の動揺は隠せないまま、新室に意見を求めた。

「僕の仕事のことは理解しているだろう、理想の結婚生活の実現は難しい…すれ違いが目に見えている、たまに顔を合わせるのが丁度良いのさ」

「気を遣わなくていいわ、何なら籍を入れなくても…」

「夫婦ごっこで満足か?他にはいないのか?」

「返事を変える気はないのね?」

 新室たちの話は嚙み合わず、激しい口論の果てに…


「僕の気持ちは変わらない、今の警護が終われば、しばらく会えないかもしれない、短い間だったが楽しかった」

「それって…別れるって意味?何でも唐突ね」

「価値観の違いだ、僕たちは結ばれるべきじゃない」

「そう、分かったわ…さようなら」

 優美はそう言って、新室の部屋いえから走り去って行った。別れ際、彼女の瞳に光るものがあったが…


 新室は優美を呼び止めず、すぐ気持ちを切り替えた。二人は破局して、恋愛の花は儚く散った。

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