第7話-3

追憶の焦点

第3章 皇女の守護者


1.めぐり逢い


 薄暗い宿泊部屋のベッドで新室たちは世間話をしていたが、その最中、優実は新室の逞しい裸体からだを優しく触れて、痛々しい傷跡があることに気づいた。


「あなたの仕事って思った以上に過酷ハードなのね」

「ああ、だからね、何度死線を彷徨さまよったか…」

「やってる仕事が辛いと思ったことは?」

「しょっちゅうさ…皮肉にも仕事で忘れてしまう、他にできることが無いしね…君は続けていくのか?」

「私がいる世界も厳しいからね、若いがどんどん入ってきて、いつまで働けるか心配だわ…」

「自分の店を持つ気はないのか?」

「そういう話題になって、常連さんが支援するって言ってくれるけど、経営には興味ないの」

「辞めた後どうする?」

「さあ…しばらく生活できる蓄えはあるわ…充分稼がせてもらったからね、結婚も視野に入れているけど…」

「え?」

 その時、優実は新室の顔をじっと見て、意味深な発言をした。このまま二人は結ばれていくと予想されたが、思いがけない事態により、彼らの関係は長く続きそうになかった。

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