第7話-1

追憶の焦点

第3章 皇女の守護者


1.めぐり逢い


 都内の繁華街を歩き回る男女二人、これから起こる出来事は物語の核につながることになる。


 一人の女性外国人は慣れない街路を散策しているが、表情は硬く、観光目的ではないようであった。

「………」

 偶然、女性外国人がいる付近に新室にむろが通りかかり…


「何かお困りかな?」

「え?」

 新室は女性外国人のことが気になり、つい話しかけた。

「ん…もしかして外国の人?…あれ、どっかで見たことあるような…」

「あの…道をお尋ねしたいんですが…」

「何処に行きたいの?」

「えっと…なんですが…」

 女性外国人は新室にあるものを差し出した。それは一枚の絵ハガキだった。どうやら差出人の住所が目的地のようだ。


「ここは…」

 新室は女性外国人の目的地に心当たりがあるようだった。ハガキに印刷された写真を見ると、さらに彼の表情が一変して…


「案内してくれるんですか?」

「まさか、君は…」

 新室は女性外国人の正体に気づいた。彼女はモナクライナ皇女のミーシャだった。彼らは騒ぎ立てず、静かに目的地に向かった。が…


「この辺ですか?」

「ああ、間違いないんだけどな…」

 新室たちは絵ハガキに書かれた住所の場所に辿り着いたが、困惑している様子だった。印刷写真と照らし合わせると、すっかり街の雰囲気が変わってしまっていた。

 かつて、会員制の高級クラブであったが、現在は閉店して、雑居ビルに建て替えられていた。


「ここに店があったんですね」

「そうだ、僕も久々に来たからな、もう二十年くらい経つかな」

「そうですか、わざわざ案内してくれてありがとうございます」

「いや…それにしても、こんな場所でモナクライナの皇女様プリンセスと出会うとは…一人で行動しているのか?」

「はい、黙って来ました」

「大丈夫なのか、今頃、大騒ぎになっているぞ」

「分かってます、帰ってちゃんと謝ります…でも、こんな機会が無くて…を見ておきたかったんです」

「やはり、そうか…君は〝優美ゆうみ〟の…」

「母のことを知っているんですか?」

 ミーシャは新室の意味深な発言で、彼から離れようとしなかった。


「………」

 新室たちは別の場所に移動するが、二人をじっと見ている者がいた。


 新室たちは場所を変えて、行きつけの喫茶店を選んだ。彼らは店奥のテーブル席に座り込み、話の続きをした。


「本当に…よく似ている、何だか懐かしいな」

「失礼ですけど、母とはどういった関係ですか?」

「古い…さ」

 新室は注文したコーヒーが卓上に置かれると、ミーシャに昔話をした。

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