第3話-3

追憶の焦点

第1章 現場復帰


3.チーム合流


「いらっしゃいませ!お荷物をお持ちします…」

 礼儀正しく威勢の良い一人のベルマンが応対するのだが…


「予約したと申します」

 ホテルに訪れた仕立ての良いスーツを着た男性客は新室で、彼は偽名を名乗った。

すると…


「…あんたがか?」

「君は?」

 新室はベルマンの一変した態度に対して、驚きの反応を見せた。

「藍井班の者だ、越吹昴こしぶきすばる…〝スバル〟と呼んでくれ」

 越吹は、一回り以上年上の新室に馴れ馴れしく話し掛けた。

「よろしく、状況を教えてくれ」

 

新室たちはフロントに着くまで、小声で作戦内容について話し合った。

「…今のところ、ホテル内に不審者はいない」

「どうして分かる?」

「フロントに盗聴器と超小型カメラを仕掛けている、音声データや映像は浅野のPCパソコンに送信されるんだ」

のことか?」

「ああ…彼の手にかかれば、ホテルのシステムなど簡単に侵入できる、宿泊者の素性かおは調査済みだ」

「さすが、ハイテクにはかなわないな」

 浅野はホテル内のカフェで寛ぎながら、PC作業を行っていた。


「古谷様、係の者がご案内いたします」

 新室はフロントで宿泊手続きチェックインを済ませて、越吹に部屋まで案内された。

白石しんじんが潜入したら、本格的に動く、護衛対象は夕刻頃に着く予定だ」

「それまで自由時間か?」

「ああ…指示が出るまではな…ルームサービスでも頼んだらどうだ?」

新室はベルマンに扮した越吹と一旦別れて、しばし休息時間を得た。

 それから時間が経ち…


 夕刻、ホテル内は緊張感が高まっていった。一日目の表敬訪問を済ませたモナクライナ皇族が宿泊するため現れた。

 ホテルの駐車スペースには送迎用の高級外車が停まり、車扉が開くと、モナクライナ皇族が気品あるオーラを漂わせて出てきた。


「いらっしゃいませ、当ホテルにご宿泊していただき光栄です…」

 ホテルの支配人は、モナクライナ皇族の前で歓迎の挨拶を述べた。

越吹は部屋案内を任されて、部屋で待機している新室たちも動こうとした。

 

 今回の任務は極秘で、外部に漏れることを避けるため、ホテル側に協力を求めることはできなかった。よって、何か障害アクシデントが起きれば、作戦行動は強制的に中止となる。

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