第3話-1

追憶の焦点

第1章 現場復帰


3.チーム合流


 東京国際空港

 午前時間に一機の航空機が予定通り到着した。搭乗者は日本の友好国であるモナクライナのロイヤルファミリーと関係者だった。空港のゲートには大勢の観衆やマスコミ陣が待ち受けており、モナクライナの皇族は日本国民に歓迎されていた。


 ミーシャは空港に集結した日本国民に対して、優しく対応して、イメージアップにつながっていた。


「………」

 モナクライナ皇族の来日で、空港内が歓喜のムードに包まれる中、観衆の中に妙な人物が紛れていた。野生動物のような獲物を狙う眼つき、その男は極めて危険な気を放っていたが、幸いなことに何も問題を起こさず、その場を後にした。


 同じ頃、新室は藍井の頼みごとを引き受けて、アパートの前に停まった送迎車に乗った。彼が後部座席に乗り込むと送迎車は発進、運転手はダークスーツを着た清楚な女性であった。


「うちのチームがいる場所まで案内します」

「君は藍井の部下なの?」

「はい、まだ新人ですが…」

「彼に意地悪なことされてない?」

「いえ…新室様は藍井チーフと一緒に仕事していたんですよね?」

「昔の話だ、あいつも偉くなったな」

「あなたの活躍は藍井チーフや先輩から聞いています、いろいろと勉強させていただきます」

「僕はもう過去の遺物にんげんだ、お手柔らかに頼むよ」

 新室は過去の栄光にすがるタイプではない。古巣のことはあまり思い出したくないようだ。公安警察を辞してから、彼の生活環境じんせいは大きく変わっていった。睡眠時間を削ることなく、ぐっすり眠れる幸せ、好きな時に好きなことができる。食事もじっくり味わえて楽しめる。

 のようなもので、新室は今の生活を満喫していた。今回、昔の職場に戻ったのは何か理由があるのか、徐々に紐解かれようとしていた。

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