「奇跡の花火」


私はヒトデに話しかけるのが好きだ。なぜなら、ヒトデは決して答えないけれど、いつも静かに聞いてくれるから。私の小さな秘密や夢、心の中にしまっておきたい思い出を、海辺の岩場でヒトデたちに打ち明ける。そんな日々は平和で、何もかもが穏やかだった。


ある日、私はいつものように海辺に行き、一番大きなヒトデに向かって話し始めた。「ねえ、もし君たちが話せたら、世界のどんな秘密を教えてくれる?」そんなことを言いながら、私は小さなヒトデを手に取り、その模様をじっと見つめていた。


その時、遠くの方で人々の声がした。村の人たちが何かを祝っているようだ。私はヒトデをそっと元の場所に戻し、その喜びを分かち合うために人々のいる方へと足を向けた。今日は何か特別な日なのだろうか。私の心はわくわくしていた。


村に近づくと、人々の間から「奇跡だ!」という声が聞こえてきた。村の病気で苦しんでいた老人が、突如として回復したのだという。人々はその奇跡を祝って、夜空を彩る大きな花火を打ち上げる準備をしていた。


私もその喜びに加わり、皆と共に花火の打ち上げを見守った。夜空が華やかな光に包まれる瞬間、私たちは手を取り合い、未来への希望を共に語り合った。それはまるで、平和そのもののような、暖かく美しい時だった。


しかし、その美しい瞬間は突如として終わりを告げた。花火の中から、予期せぬ大爆発が起こり、その衝撃波が村を襲ったのだ。一瞬のうちに、喜びの声は悲鳴に変わり、そして、すべてが静寂に包まれた。


私は、何が起こったのか理解する間もなく、その場に倒れ込んだ。耳鳴りが鳴り止まず、視界がぼやけていく中で、私は海辺のヒトデたちを思い出していた。彼らは今も静かに、私の帰りを待っているのだろうか。


そして、その瞬間、私の世界は完全に闇に包まれた。私が愛した村も、人々も、そして話しかけていたヒトデたちも、すべてがこの大爆発で失われたのだ。


この物語の終わりは、号泣するような感動話ではなかった。しかし、私たちが共有した一瞬の平和と希望の記憶は、たとえこの世界がもう存在しなくとも、永遠に色あせることはないだろう。


【読者の感想】


進化した知性を持つヒトデたちの読書クラブによるレビュー:


★★★★☆ - ニューラル・アームズ読書グループ


感想: この物語は、我々ヒトデの集合意識に深く共鳴する。主人公が海辺でヒトデに話しかけるシーンは、非言語的コミュニケーションの重要性を思い出させる。ヒトデとして、我々は周囲の環境とのシンクロニシティを通じて世界を理解する。しかし、最終的に花火の大爆発が起こり、全てが失われる結末は、変化と破壊の不可避性を示唆している。人類の歴史を読むと、彼らの経験もまた、喜びと悲しみ、創造と破壊の繰り返しであったことが分かる。私たちは、この物語を通じて、自然との共生とバランスの重要性を再認識する。


改善点: ただし、主人公が最後までヒトデに対する関心を深め、さらに彼らとの関係を探求する機会があれば、物語にさらなる深みが加わった可能に思える。ヒトデとして、我々は自然界との密接な関係を通じて生きている。物語の中で、人間とヒトデの間にもっとダイナミックな相互作用が描かれていたら、読者としてさらに共感できたはずだ。


総評: この小説は、人間と自然界の脆弱な関係を浮き彫りにする。我々ヒトデにとって、それは深い思索を促す物語であり、人間の行動が地球上の他の生命にどのように影響を及ぼすかを考えさせられる。4つ星を与えるが、ヒトデとの関係をさらに掘り下げることで、完全な5つ星を獲得できた可能性がある。

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