第33話 結合テスト
ユキが連れられてきたのは、野外にある倉庫のような建物であった。
(ひょっとして……)
「ここは倉庫ですー!」
(おぉ……!)
「冷蔵倉庫の試作をするため専用に、断熱素材を駆使して、準備しちゃいましたー!」
「おぉお! すごいです!」
「うむうむ」
ソレハとオーエスは満足そうだ。
「というわけで、早速、中の視察をしてねー」
「はい」
ソレハとオーエスに連れられ、アイシャとユキは倉庫の中に入る。
倉庫の内部は質素なものだ。
いくつか検証用と思われる食材が置かれているが、それ以外は特に何もない。
だが、すでに内部は少しひんやりとしている。
「試しにユキくんの魔道具を設置させてもらっていまーす。おかげで、すでに少し涼しいでしょー?」
「そうですね!」
「でも、これだと冷蔵するにはやはり不十分だったんだよねー」
「なるほどです!」
「というわけで、ユキくん、ナイスタイミングだよー! 早速、その〝スプリンクラー式冷却魔法具〟の性能検証をしてみようじゃないかー!」
「はい……!」
ということで、ソレハがさらっと命名してしまったスプリンクラー式冷却魔法具の冷蔵倉庫における性能検証を行うことにした。
といってもやることは単純で、魔法具を設置して、しばらく待つだけである。
アイシャ様はその間、用事があるらしく、どこかへ行ってしまったが、5時間後には戻ってきてくれた。
そして、再び、倉庫へ戻り、冷却具合の確認を行う。
「「「「おぉおー!」」」」
四人はそろって口を開けて、小さく感嘆する。
倉庫に入った瞬間にわかる程に、明らかに冷却性能が向上している。
「素晴らしい……! 素晴らしいぞ、ユキ、ソレハ、オーエス! これだけの容量を冷却できれば、相当な食糧保存が可能だ! 流石にこの一基だけでは十分とはいえないが、量産することができれば、多くの民が救われる!」
「は、はい……」
「全く、君は控えめだな……」
アイシャは少しだけ呆れるように微笑む。
「…………それにしても少し…………寒いな」
アイシャは背中を丸めて、その細い腕を
「……少し性能が良すぎたのだろうか」
などと言っている。
「アイシャ様……氷の魔女なんて呼ばれてるのに、寒がりなんですね」
ユキは何気なく、そんなことを言う。
と……
「っっっ……!」
アイシャは思いのほか、赤面する。
(え……?)
ユキはアイシャ様のその様子に、焦って、オーエスに耳打ちで確認する。
「アイシャ様って……寒がりなこと気にしてたりするんですか?」
「知るか……俺には……いや、俺じゃなくても、アイシャ様にあんなこと言えん」
(っ……! やば……不敬という奴か……)
「あ、アイシャ様……申し訳……」
「き、気にするな……ちょっと恥ずかしかっただけだ……それより私は君がそんな風に私のことを〝普通に〟扱ってくれることが嬉しい」
「っ……!」
(結果オーライ感があるけど、つくづく無知っていうのは恐ろしいな……気をつけねば……)
と思うユキであった。
=======
【あとがき】
ここまでお読みいただき有難うございます。
次話から野外演出になります!
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