第98話 花むしろ 🌸



遠目にも色づきたるや桜土手

長きもの運ぶふたりや桜待ち


連山を借りてりんぜん初桜

地下茎を張り巡らせて初桜


川に添ふ街から里へ花の雲

花冷の花の底行く人の群れ


花盛りモールの庭の爛漫に

慎ましき友はなやげる花衣


咲き満ちて真白にいたる桜かな

花むしろお利口さんのお座りす


高空の彼方を渡る花吹雪

三畳の尼寺に降る花吹雪


まつたりと花見船ゆく隅田川

木母寺もくぼじの名も傷ましき梅若忌


人知れず枝を離るるさくらかな

身もだえる空の悲哀や飛花落下


夕桜あすの桜を知らざりき

夜桜を掠める雲の翳りかな


ひなたでの一日の長し花疲れ

体幹に満ちるもの憂さ花疲れ




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