第87話 子の切なさを 🌼
おすはりに不承不承の余寒かな
逃げし猿ちんまりとゐる冴返る
雪の実を尾長しきりに啄みぬ
水仙や子の切なさを遠くから
薔薇の芽のふくらみかけて精神科
捨て畑に菜の花咲きてうすぐもり
春光やポプラの葉うら葉のおもて
山茶花のかんざし風にちりと鳴り
駅前の老舗和菓子屋わらび餅
ふるふると震へてゐるね蕨餅
一折に餡を敷き詰め草団子
皮すこし乾ける午後の桜餅
小さき家の北窓開き道を見る
紺法被の城の雪垣解きゐたり
割烹の玻璃にワインや春灯
春灯となりは四人家族にて
コンビニの灯り眩しき余寒かな
冴返るこのスペースに救はれて
閑居して外を見てゐる二月尽
堪へ来し時の過ぎゆく二月尽
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