掌編「両親の馴れ初め」



「ねえおかーさん。

 おとーさんとはどこでどう出会って結婚したの?」


「え、どうしたの急に」

「学校の宿題」


「宿題で、そんなプライベートなことを聞いてくるの……?」



 母親は迷いながらも、提出するプリントは後で添削すればいいや、と思って素直に答えた。

 まあ、正直に話したことをそのまま提出されたとしても、子供の落書きだろうと思って鵜呑みにはされないとは思うけど……一応だ。


 先生に嘘をつくことができても、娘に嘘をつくことはできない――したくなかった。


「お父さんと出会ったのは、狭い部屋の中だったなあ……」

「ふんふん」


「で、急に足下から水が出てきてね……、制限時間が一時間。一時間後には部屋の中が水でいっぱいになっちゃうの。だからお父さんと協力して、部屋の出口の鍵を見つけないといけなくて……――今でも鮮明に覚えてるわね」


「ふむふむ……ん?」


「確か、初チューはそこだったわね……

 まあ救命活動だったんだけど……でもカウントしちゃったの」


「おかーさん……作り話は、ダメ」


「本当よ? だって私とお父さん、【デスゲーム】で出会ったんですから」


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