第1章 9話
とある街の中にある1つの便利屋。
周りに比べると小さめなビル。その中にある一際豪華な部屋に、1人の男がいた。フカフカのソファの上には男女2人組がタブレットを覗いて楽しそうに笑っている。
「今回の子達、癖が強そうね。」
「でも、その分優秀そうだよ。」
「そういうのが1番厄介なのよ!分かってないわねー。」
タブレットには、まるで監視カメラの映像のようなものが映し出されている。5人の少年少女がそれぞれ資料を手に取って考え込んでいる。そんな映像を見ている2人に、男が声をかけた。
「2人ともやめなさい、監視なんてするものじゃないよ。」
「博士は何も分かってない!
「おい、やめろよ。緊急事態なら博士だって動くさ、そんな四六時中見張るなってことだろ?」
「そんなこと分かってる!でも、少し能天気すぎるのよ!」
「…そうかもね。君が声を荒らげる理由も分かる。だが、暴走してしまえばそれまで。始末するしか選択肢がないのに、それをわざわざ見る必要は無い。」
すごい勢いで異議申し立てをする少女は、画面に映っている少年少女とさほど年が変わらなさそうな子供。隣にいた少年も同じだ。そんな子供たちが大人に対して真っ向から意見を言うのは珍しい。
しかし、諦めたような顔をする大人に子供は何も言えなかった。選択肢も何もない彼らには、どうすることもできない。ならせめて、画面の向こうの子供たちに自由くらい与えたっていいだろう。
「……ねぇ博士。この子達、今夜を乗り越えられるの?」
「それは私には分からない。」
「2人死亡、1人が右腕の欠損。残りの2人のうちの1人は未だに精神が安定しない。今のところ優勢なのは有坂とかいう男なんじゃないか?」
「
「顔は好みだろ?」
「顔だけよ。」
随分と好き勝手話している2人は、タブレットの画面を消し、机に置いた。これ以上見ていれば、あの大人が黙っていないだろうか。恐れているわけではない。ただ、彼が望まないことはしたくない。それだけだ。
「
「つまり、現実の肉体とあのセカイでの肉体は全く別物。どれだけ現実離れしたことだってできるし、なれる。それにあの子たちはいつ気づくのかしら。」
「あんな真面目に推理してる時点で望み薄だな。
「決めつけるのにはまだ早い。彼らは
2人の向かい側に座った大人は、机にバサッと5つのクリアファイルを置いた。そこには5人の少年少女の顔写真と情報がこと細かく書いてある。一体どうやってそんな情報を調べあげたのか。彼らは何が目的なのか。
全ては闇の中にある。微かなヒントから、自身の想像力と願望で正解を見つけることができるのか。それは誰にも分からない。
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