第19話

 「今週のN3ハイライトが始まりました」


 20代後半のアナウンサーが流暢なアナウンスで番組開始のお馴染みのフレーズを発した。


 彼女の片割れには20年ほど前に日本代表で活躍し、その持ち前のキャラクターで人気を博する解説者がいつもの様に番組を盛り上げるコメントを発して各試合のダイジェストが始まった。


 西東京アルケミストと筑前の試合が放送されたのは5試合目で番組の中盤だった。


「次は筑前と西東京の試合です」


「この試合では西東京に大きなアクシデントがありましたが、救ったのは縁の下の力持ちでした」


 アナウンサーのVTR振りの言葉が終わると、筑前と西東京の試合の映像が流れ始めた。


 西東京の川田が試合直前に体調不良になり離脱して、急遽、桜井が先発してこと。序盤のプレーで桜井が負傷したことが流された。


 その後は筑前のシュートを防ぐ桜井が映され活躍が伝えられたが、「後半にペナルティーキックが筑前に与えられた、これを決めて勝ち点3をもぎ取りました」という言葉で締めくくられた。


 自分のプレーがテレビで流れるのは嬉しいが、チームを勝たせることができなかった。


 桜井はその悔しさを晴らすかのように、風呂場で冷たいシャワーを頭から浴びた。

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第三ゴールキーパー 木内東亜 @carrack

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