第2話『狩りゲーとネット掲示板』
その狩りゲーは当初、そこまでの知名度はなかった知る人ぞ知るマイナーゲームだと思われていた。
何よりブラウン管テレビがまだ活躍していた頃である。
携帯電話もガラパゴス式ではなく、PHと呼ばれるタイプで発展途上にあった。
故に私も当初のゲームの事を風の噂程度に聞く程度であった。
そんな私がゲームに触れる機会があったのは携帯ゲーム機の普及による爆発的な人気によるものである。
つまるところ、私が狩りゲージャンルに足を踏み入れたのは家庭用ゲーム機対応から携帯ゲーム機対応になる頃合いであった。
当初の家庭用ゲーム機であるプレイステーションは当時の私の給料で買うには手が届かず、セガ・サターンの類いをプレイしていた。
それに比べれば、当時のプレイステーションポータブルと言う携帯ゲーム機は良心的な価格であった。
私の記憶違いでなければ、プレイステーションポータブルが19800円なのに対して、家庭用ゲーム機であるプレイステーション2は23000円以上だったと記憶している。
故に私がやるゲームは片手間でも出来る携帯ゲーム機である事が多かった。
その頃の狩りゲーはまだ発展途上で武器の種類も少なく、仕様もまだ荒削りであった。
部位破壊と呼ばれるものも少なく、最初の鬼門である先生と呼ばれるモンスターにはかなり世話になった。
この頃はまだまだ私も駆け出しであり、武器もボウガンを使っていた。
このゲームを知る者なら解るだろうが、ボウガンの弾は素材を大量に消費する所謂、ハズレ武装である。
昨今のような連射性能もないし、当時の遠距離用の防御力は通常の剣士クラスの半分程度の防御力で所謂、紙装甲であった。
加えて、私も防具についてのスキル知識も乏しく、相討ち覚悟で上位の先生を倒せれば良い程度に考えていた。
この頃から私はネット掲示板で仲間を探すようになっていた。当時はプレイステーションポータブルよりもプレイステーション2が浸透しはじめて、丁度、新作に切り替わる時期であった。
とは言え、携帯ゲーム機で遊ぶ仲間がいない訳でもないが、その頃の私はだいぶ性格が捻くれていた。
ネット掲示板でも、ある種の奇人ぶりを見せていたと思う。
何よりも、その頃の私は人間不信であった。
学校でも問題視されるくらいには周囲に馴染めずに孤立していた。それは成人してからも変わらず、端から見れば、私の行動は理解に苦しむものだったろう。
それでもネット越しでの顔も解らない狩り仲間同士のコミュニケーションは楽しかった。
いつしか、私はこのゲームにのめり込む内に掲示板である種のネット小説を書くようになる。
それこそが私が小説を書くに至ったルーツと呼んで良いだろう。
当初は原作リスペクトのネット民に叩かれたりもしたし、荒らしやなりすましの類いにも遭遇した。
いまでこそ、ネットリテラシーというものがあるが、当時はほぼ無法地帯の攻略サイト掲示板であった。
その後はネット越しで親しくなった方と共に攻略サイトから離れ、独自の道を歩むようになるのだが、この頃のメンバーとはいまではやり取りをしていない──と言うよりは他のゲームなどの勢力もあり、次第に人が離れたりしたのもあっただろう。
こうして、私の最初の狩りゲーを通しての交流はネット越しでの軽い付き合いとして、何らかの付き合いをするでもなく、時代の波に流されて行くのであった。
そんな中である日をきっかけに私は他人と初めて、狩りゲーをする事となる。
『一緒に狩りをしませんか?』
ネット交流で流れてきたのは、そんな一文だった。
ネット交流なんてものは初めてだったし、何よりも作法や何も解らない。
とりあえず、不良時代の舐められたら終わりの精神でネット交流で知り合った人と狩りゲーをする事になる。
この頃の私は剣士防具を身に付ける知識を得たが、外見だけ取り繕ったネタ装備の人であった。
当然ながら初めての連携はお世辞にも上手いと呼べるものではなかった。
何よりも私のスタイルが喧嘩腰でモンスター相手に状態異常の相討ち狙いだったのでネット交流で知り合った学生さんはかなり困惑したであろう。
こんな形で初めての交流での狩りゲーを楽しんだが、その後の交流した学生さんはある日を境に音沙汰がなくなってしまった。
やはり、初手が良くなかったのだろうかと時たま思う。
何よりもネットから交流で狩りゲーをする事になった初めての交流である。
落ち度については色々あったと思うが、やはり人間不信の名残がちらついているのが、私の最大の要因であったのだろう。
その後はネット交流はするものの集まって何かをしたりなどはせず、表面だけの付き合いで互いにそれぞれの道を歩みはじめるのであった。
その頃には私はネット交流のあった方達と共にサイトを立ち上げ、交流から生まれた作品をアレンジする事に専念した。
それこそが私の最初の作品とも言うべき、夕闇の不協和音と言う狩りゲーのキャラクターをベースにイメージした主人公の半生を描いた作品であった。
いまではサイトのサービスが終了して読む事が出来ないが、あれこそが私が私たる由縁となった分岐点と言っても過言ではないだろう。
こうして、私はまた自分の殻に篭り、作品を発展させる事のみに専念するのであった。
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