第110話 攻略条件
(やっぱり人間にとって、太陽の光を浴びることは大事だよなあ)
ミズトは『無限迷宮』の入口から姿を現すと、澄みきった青い空を見上げた。
まるで今のミズトの心情を表しているようだった。
【あの御方を満足させるのに十五日も費やしてしまいましたが、無事に出ることができ安心しました】
(ああ……最初は殺されるかと思ったが、何とか戻ってこれたな……。そういえば『無限迷宮』の攻略ログが流れてたけど、倒してないのに攻略扱いなのか?)
【あの御方はダンジョンボスではありません。そもそも倒すことは不可能で、満足させることが攻略条件でした。しかし、実力で満足させることもほぼ不可能でしたが、能力を制限されているミズトさんに、あの御方が興味を失ったおかげで風向きが変わりましたね。必要経験値の大幅な増加や、わたしの能力制限がスキル『女神の憂鬱』によるものだったとは】
(ある意味、助かったのは女神のおかげだな。師弟システムにも興味もってくれて気を逸らせたし。ただ、いつ気が変わって、また狩ると言い出すのか気が気でない半月だったけど……)
ミズトは思い出すだけで顔が引きつった。
結局、ミズトには最後まで何かが黒い
エデンの説明では、それはあの御方とミズトの能力がかけ離れているため、存在を認識できないからだと言う。
それでも、半月掛かってもミズトが何かに勝つことはおろか、一太刀も浴びせることは出来なかったのだが、師弟システムを利用した模擬戦を繰り返すだけで、最終的には満足してミズトを解放したのだった。
「ワンワンワンワン!!」
近くで聞き覚えのある子犬のような鳴き声が聞こえた。
「クロ?」
ミズトは駆け寄ってくるクロの姿を目にし、しゃがんで迎えた。
「ワンワンワンワンワン!!」
「おまえ、もしかしてずっと待ってたのか?」
「ハッ! ハッ! ハッ! ハッ!」
クロは撫でてくるミズトの手に、顔を擦りつけるように一生懸命じゃれついている。
喜びを抑えきれずに、止まることが出来ないようだ。
「はは、小さいわりに落ち着いてると思ってたけど、やっぱまだ子供なんだな。悪かったな、待たせて」
ミズトはクロを抱きかかえた。
「クゥゥゥン」
クロは嬉しそうに鳴くと、ミズトの腕の中で顔を胸に
【ミズトさんがそのようにクロを抱き上げたのは初めてです】
(ん? まあ……ずっと待ってて、疲れたんじゃないかと思ってな……)
【さすがのミズトさんも、クロに情が移ったようです】
(だから、俺は動物好きじゃないが、嫌いってわけでもないって何度も……)
この手の会話をエデンとしても意味がない。
ミズトは大きく溜め息をつくと、クロを撫でながら王都ルディナリアへ向けて歩き出した。
*
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経験値収穫祭 ランキング
順位 パーティ名 獲得
1位 神楽1班 6,135,593
2位 閃光の天使 6,052,218
3位 天を超越した者 5,021,893
4位 日本卍会総長 4,981,252
5位 もふもふ一丁目☆ 4,964,187
6位 神楽2班 4,958,309
7位 悠真と仲間たち 4,791,691
8位 ブルーベリーガーデン 4,685,274
9位 もふもふ二丁目☆ 4,603,772
10位 神楽3班 4,573,129
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◆イベントクエスト完了◆
おめでとうございます。
3位の報酬が支給されます。
クエスト名:経験値収穫祭
報酬:経験値3,000,000
金3,000,000G
クランの魂
覚醒石×10
ガチャ券×10
プレミアムガチャ券×1
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ミズトは王都ルディナリアへの帰路の途中、イベントクエストのことを思い出しクエスト結果を表示した。
(おっと、何だかいろいろ報酬が貰えたな。俺の獲得経験値五百万ってイベント初日の分だけってことだよな? あれだけで三位か……)
【
(大きな隔たりねえ……。ん?
【はい、
(そういえば、『成長力』は才能みたいな意味があるんだったな)
【はい。
(なるほど……。ところで、今のはエデンさんが進化したから知ってるんだよな? 『存在力』の意味も知っているのか?)
【もちろんです。スキル『女神の知恵袋』が『女神の叡智』へ進化したことにより、わたしはこの世界のほぼ全ての知識を保有し、過去や未来さえも覗き見ることが可能になりました。そのため『成長力』と同様に隠しステータスである『存在力』が、世界へ対する影響力を示していることも把握しています】
(過去や未来さえもねえ……。じゃあ、『無限迷宮』の最深部にいたあれは何だったのか知ってるのか?)
【申し訳ございません、今はお答えできません】
(今は……? 知ってるけど教えられないってことか?)
【申し訳ございません、回答内容に制限が掛かっている場合があります】
(今までは能力に制限が掛かっていて知らなかった。今は知ってるけど教えることに制限が掛かってる。そういうことか……?)
【そのように受け取ってもらって問題ありません】
(…………)
分かりませんと言われた方が、スッキリするような気がした。
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