第35話 地下十八階の戦い
地下十八階の戦闘は、初戦から今までとの違いをミズトは痛感した。
相手はレベル57のスケルトンメイジ一体、レベル58のスケルトンナイト二体、レベル62のオーガウォリアー二体。
「水の精霊よ、私に力を貸して! 『ウンディーネ召喚』!」
セシルはモンスターの姿を確認するなり、直ちに魔法を唱えた。
エンディルヴァンド地下洞窟に入ってから召喚魔法を使用したのは初めてだ。
すると空中に水の渦が出現し、その中心に青い髪の小さな女性が姿を現した。大きな瞳や柔らかな口元、長い耳に整った顔はエルフを連想させるが、セシルの半分も満たない大きさと、背に水なのか羽なのか区別できないものがあり、違う種族だと分かる。
「ミズト、気をつけて! 私と精霊が前に出るけど、抑えきれないこともあるわ! なんとか自分の身は守って!」
セシルはそう言って走り出すと、水の精霊ウンディーネがそれに追尾していった。
(マジか。気を抜けそうにないな……)
ミズトは剣を抜いて、一応構えた。
オーガウォリアーは通常のオーガより少し大きく、鉄の斧でセシルの弓矢を弾き飛ばしている。魔法の耐性が高いのかセシルの魔法を受けても
セシルでさえ二体のオーガウォリアー相手に苦戦しているように見えた。
スケルトンナイトは名前に相応しく、人間の騎士のように剣と盾、鎧を装備している。水の精霊ウンディーネが放つ水の魔法も、しっかりと盾で受け止める。
これもまた水の精霊ウンディーネは二体相手に膠着状態のように見えた。
残りのスケルトンメイジはローブを着たただの骸骨に見えるが、手には魔法使いが持つ杖を持っている。気配を察知できるミズトは、その魔力量が今まで出会ったどのモンスターより大きいと感じとっていた。
そしてスケルトンメイジは――――――ミズトをまっすぐに見ていた。
(あれ? あの骸骨、フリーじゃないか?)
【はい、セシルさんも水の精霊も、スケルトンメイジまで手が回らないようです。ミズトさん来ます!!】
珍しく、いや初めてと言っていいぐらい感情のこもった声でエデンが言うと、スケルトンメイジの持つ杖から炎の
(危なっ!)
ミズトは直前でかわした。
(ナ、ナイスだ、エデンさん。今の喰らったら危ないよな?)
【ミズトさんは魔法を受けたことがないので、どれほどの魔法耐性があるのか分かりません。しかし今のミズトさんの能力に適した魔法耐性だった場合は、当たれば一瞬で炭と化すでしょう】
(……え? そんなに!? あ、また撃ってきやがる)
エデンと話している間に、スケルトンメイジは再度魔法を放ってきた。
しかし、今度は炎の
(よし、撃つ瞬間を見ていれば避けられない速度じゃないな。とは言っても一発当たれば終わりか……)
「くそっ!」
ミズトはスケルトンメイジへ向かって駆け出した。
距離をとったままでは
距離を詰め近接戦闘に持ち込んだ方がまだマシなのではと思ったのだ。
「はああぁぁぁっ!」
スケルトンメイジの魔法を二発避け、剣が届く位置まで来ると思いっきり剣を振り下ろした。
ガチン
想定と違う感触。木刀で岩を殴ったような痺れが手に伝わってきた。ミズトの攻撃力ではレベル57を叩き斬ることは難しいようだった。
しかし、それでもスケルトンメイジがグラついたので、全く効いていないわけではなさそうだ。
「こうなったらぁぁぁぁっ!」
ガチン ガチン ガチン ガチン
ミズトは魔法を撃たれないよう何度も何度も剣を叩きつけた。
スケルトンメイジは魔法を撃とうとするのだが、ミズトの早い連打攻撃に、その隙を作れずにいた。
すると、パキッとスケルトンメイジの頭蓋骨が欠けた。
(いける!)
「そこかぁぁぁぁっ!」
ミズトはひび割れた箇所を
「このこのこのこのこのこのこのこのこのぉぉっ!!」
段々とひび割れは広がり、ついには頭蓋骨全体が叩き割れた。
(よっしゃっ!)
「ふぅー」
スケルトンメイジはその場で崩れ落ち、数秒で消滅しだした。
====================
オーガウォリアー達を倒しました。
あなたは経験値19,220を獲得しました。
レベルが6に上がりました!
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久しぶりにレベルが上がり、ミズトは表示された取得スキルのログに気を取られていると、すぐ横から声を掛けられた。
「あなた、凄いわね」
「わっ!?」
横を見ると、いつの間にかセシルが真横に立っていた。
水の精霊ウンディーネと他のモンスターの姿は見当たらない。すでに決着がついたようだ。
「それ、ただの鉄の剣ね? そんなのでこのレベルを倒すなんて面白いわ」
セシルの視線がミズトの持つ剣に向けられた。
(言われてみればRPGでも、レベルが上がれば強い武器に買い換えるよな)
「今まではこれでも困らなかったので……」
「責めてるわけじゃないわ。ただ、そんな初心者用武器で、よく力任せに倒せたと、感心してるの」
「はは……恐縮です……」
「あなたに頼んで本当良かったわ。この調子なら大丈夫そうね。さあ、行きましょう」
「承知しました」
「あっ。もしかしてレベルが上がったのかしら?」
セシルは数歩動いたところで立ち止まった。
「はい、今の戦闘でなんとか」
「上がったレベルは一つよね?」
「はい、もちろんです」
「そうよね……」
セシルは一瞬何か考え込んだが、すぐに興味がなくなったように歩き出した。
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