キジが飛ぶといぬにあたる?

あしはらあだこ

第1話

 鬼が島から船で出航した一匹と一羽。

 漕いでいるのは、もちろん、さる。

 舳先に、海風を受けながら気持ちよさそうにしているキジ。

「本当に、こっちであっているのでしょうか」

「鬼が島に来るときに、ウツボに案内してもらった航路は覚えている」

「まずは、いぬさんを探さないと。それから、桃太郎さんは、あしがらやまにいるそうなんです」

「?なんで、あしがらやま?その場所って、寺子屋で学んだ時に、金太郎が配属されるってきいたけど」

「わたくしにも、わけがわかりません」

「でも、俺たちのところに現れなかったんだから、いぬも当然、桃太郎には会っていないはずだよな?」

「いぬさんは、一匹ではいられないと思うので、どなたかに、飼われている可能性は充分あります」

「でも、おまえよく俺の居所がわかったな?」

「女神さまにお告げをいただいたのです」

「?女神様なんてほんとに居んの?」

「寺子屋で教わったではないですか!!!」

「見たことも話したこともない奴のことなんか、信用するもんじゃねえっての!!!」

「それでも、確かにわたくしは聞いたのです。あの、暖かくて、ホッとする居心地の良さは、絶対に女神さまです!」

「まあ、とにかくおれたちは会えたんだから、よしとして、いぬが行きそうなところなんてわかんねえぞ」

「そうなんです」

「それこそ『女神様~』って助けてもらえば?」

「・・・」内心ムッとするキジ。

「いぬのでそうな話って、なんだっけ?」

「やはり…『花咲かじいさん』では?」

「そうだったとして、そのじいさんは、どこに居んだよ」

 その時、一条の光が、ある一点を指した。

「ゲ!あの光って…」

「そうなんです!わたくしが困っていると、いつも助けてくださるかたがいるのです」

 これには、さるも黙るしかなかった。


 一方、いぬはと言えば。

 わ~い、今日もおじいさんと、川まで来たぞ。

 魚が獲れてるといいなあ。

 バッシャ~ン!!!

 おじいさんが、網の様子を見ようとしたとき、何かが、いきなり川に飛び込んできた。

 キジとさるが、もつれ合っている。

 せっかく獲れた魚が、三々五々、網から逃れていく。

 えぇ~?

 キジさんとさるくん?


 とりあえず、おじいさんの家に、上げてもらい、身体を乾かす、キジとさる。

 いぬは、

 あぁ~ 魚が∼

 とそのことばかり、考えていた。


 キジの話によれば、さるが悪いという。

 陸に上がった、さるとキジ。

 一山超えなければならなかったのだが、さるときたら、山の猿の群れにちょっかいを出し始め、当然、山猿たちは怒り狂った。

 キジは、なんとかしなくては、と仲裁にはいろうとするが、さるは反省しなかった。山猿たちの攻撃が始まろうとした矢先、奴らの動きが止まる。

 そして、眩い光が、あたり一面に広がる。

      

                       つづく








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