風紀との遭遇
6限目の移動教室に行く途中、足りないものに気づいて戻って来たはいいものの…
「ここ、どこ…」
あれ、俺って方向音痴だったっけ?
キーンコーンカーン―――……
「コーンは?最後のコーンはどこ行った?」
いやそれは一旦置いとこう。もうこうなったら、1時間気ままに過ごすしかないでしょう。うん。
「おい、そこで何している。」
向こうから黒髪黒目のすっごいイケメンが来てるんだけど、俺に話しかけてるんだよね?
そう思って後ろを振り向くと誰もいない。
「え、えーっと…移動教室行く途中に忘れ物に気づいて取りに帰ったはいいけど、移動教室の場所が分からなくなって彷徨ってました。すいません。」
なんか偉い人そうだったから潔く謝ることにする。
「フッ、なんで俺に謝る。」
今鼻で笑った?いや違う。今も身体プルプルしてるから笑うの我慢してるんだ。
「それもそーっすね。担当の先生に謝っておきます。じゃあ、失礼します。」
「いや待て。すまない。お前の反応が面白くて少し意地の悪いことを言ってしまった。もう授業は始まっているし、
今更急いで行っても仕方がないだろう。」
「え…」
「ん?なんだ?そんなに見つめて、惚れたか?」
「いや、それはないんで大丈夫デス。ちがくて、先輩偉い人っぽいのに早く授業に行けとか言われるかと思って意外だっただけです。」
「それは残念だ。授業位何回か抜けたところで何も変わらないだろう。それに、分からないことがあれば俺が教えてやろう。」
その全く残念そうじゃない残念初めて聞いたわ。
「それは遠慮しておきます。」
「なに、気にするな。俺とお前の仲だ。」
「いや、今初めて会いましたよね!?名前すら知らないんすけど?」
「俺は知っているぞ。今日転校してきた夜須川栄人だろう?これは聞いていた以上に…いいな。」
そう言いながらイケメンの先輩は徐々に俺との距離を縮めてくる。
「いや何が!?なんか先輩怖いんですけど!ちょっと俺授業受けないとなんで、ここらへんで失礼しますね。」
「まぁ、そうつれないことを言うな。」
そう言いながらイケメンさんは俺の頬に手を添えたかと思うと顎、首へと下りていく。
「…はっ!何してんすか。」
危うく流されるところだった。あぶないあぶない。
「あの、いい加減名前教えて貰ってもいいデスか?」
「ククッ、そうだったな。俺は鈴宮輝樹だ。この学園で風紀委員長をしている。」
「風紀委員長が風紀乱しまくってんじゃないすか。え、本当に何してるんですか?」
「俺だって人間だ。たまにはこういう日があってもいいだろう?」
風紀委員長だと名乗るイケメンはそう言いながらゆっくり顔を近づけると…チュッという音がして顔が離れていく。
俺の唇には柔らかな感触が残って、何をされたか理解した瞬間。
「は、何してんすか。なんで寄りにもよって俺なんだよ!!俺は当事者はいやなんだ!ってか、会長より委員長の方が俺様じゃん。なんの番狂わせだっつーの。」
思いの他動揺していたようで、思ったことが全部口から洩れた。そうなった元凶とも言える人を恐る恐る見上げると、ポカーンと間抜けな顔をしたと思ったら…
「フフフ、アッハハハハハ…」
めっちゃ笑うやん。私にはあなたのツボが分かりまセン。
こういう笑い方する悪役いそう。
ちょっと冷たい感じの見た目してたから、ちょっと…いやかなりギャップがすごい。
「ハハハハハ、フッいやすまない。思っていた反応と違い過ぎて、フフフ。」
「もういいですよ。好きなだけ笑って下さいな。」
「顔を赤く染めながら感謝されることはあっても、キレられたのは初めてだ。」
「自慢ですか?俺も男にキスされたのは初めてです。ヤッターキョウハハジメテキネンビデスネ。」
「ほう、喜んでもらえたようで良かった。俺もお前の初めてがもらえて嬉しいよ。」
「ノってこなくていいです。先輩仕事は?」
「せっかく名前教えたのに読んでくれないのか?」
はい会話噛み合ってない~
「別に名前呼びたくて聞いたわけじゃないんですけど…」
「じゃあこうしよう。名前呼んでくれないともう一回キス、しようか。」
「え゛…輝樹先輩、輝樹さん、輝樹。敬称でいちゃもん付けられないように色んな種類で言ったった。」
「いちゃもんって…俺のことをなんだと思ってるんだか。普通は恥ずかしがったりするもんじゃ…まぁいっか。」
結局その後も中々離して貰えず、チャイムが鳴るまで輝樹先輩の餌食になっていた。
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