風紀室にて
「そういえば委員長ー、食堂での話聞きました?」
緑がかった黒髪にヘーゼル色の瞳をした、優男な雰囲気の男はソファーで仮眠をとっている人物に話しかける。とてつもなく嬉しそうに。
委員長こと鈴宮輝樹は漆黒の髪を揺らしながら首だけを上げ、話しかけられた方を見る。そうして、開かれた瞼からは同じく漆黒が覗く。
「なんだその話。俺は何も聞いていないが…」
「やっぱり!また仲間に入れて貰えてないかなと思ってたんですよ。委員長優しいですけど、話しにくいというか近づきにくい感じありますもんね。」
「俺はまた仲間に入れて貰えなかったのか…」
そう言って、しゅんとする姿は可愛らしいのだが、鋭い視線が原因で冷たい印象を持たれがちなのである。そのため、風紀の報告のほとんどが愉快そうに輝樹を見ている副委員長向井紡の方へ集まってしまうのである。それを紡は仲間外れと呼び、恒例となっている輝樹の仲間外れは紡の密かな楽しみとなりつつある。
当事者の輝樹からすれば毎回心が切なくなるが、風紀委員の子たちが自分を慕ってくれており、嫌われているわけではないと分かっているため注意はせず紡から聞いているのだ。輝樹自身どうにかしないと、と思っていた時期が確かにあったが、紡が楽しみながらではあるがしっかりと報告してくれるという信頼があるため多目に見ているのである。
「それで?食堂で何かあったのか?」
「あぁ、なんか生徒会の皆さんが全員集合したそうですよ。転校生を見るために。」
「はぁ?たかが転校生1人見るために全員で食堂へ行ったのか?」
輝樹が驚くのも無理はない。生徒会は謂わば学園の象徴。普段は落ち着いたところで食事がしたと生徒会室から中々出てこない連中が、まさにたかだか転校生1人の為に騒がしくなる食堂まで足を運んだのである。
「はぁ~仕事を増やしてくれるなよ。」
難儀なのは転校生がどんな人間であれ後々騒がれるか、最悪の場合はファンクラブからの制裁があるのではということだ。どっちにしろ、風紀の仕事が増えるのは確かなことだ。生徒会は決して能無しの集団ではないはず、であれば何かしらの理由があったのだろう。つまりは、学園の風紀を取り締まるわが風紀委員に依頼や相談をしに来るだろうと想像できる。ならば、自分から此度のことについて自分から生徒会へ赴く必要はないだろう。
「あいつ等のことだ、何かあれば直接言ってくるだろう。警戒しておくに越したことはないが、何か対策をとることは今の段階では必要ないだろう。」
「分かりました。では、見回り行ってきまーす。ついでに食堂での件、詳しいく聞いときますね。」
「すまない。頼む。」
そうしてそれぞれの仕事へ戻るのであった。
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