第23話 沈黙の会話(スカイとレナ)
――2054年 マヤ空港事件直後
スカイ (男のベータ)
レナ (ベータ2)
キリー達と少し離れたテーブル。そのテーブルを挟んでスカイとレナが互いを見つめていた。二人は会話を始めた、言葉は交わさずに。
傍目にはスカイが兄でレナが妹の兄妹に見える。スカイが髪を黒く染めているものの、二人とも白髪、色白、薄い瞳の色である。
レナの本質が決して通常の子供では無いことはすぐにわかる。年齢は9歳でも知能は既に大人と変わらない。レナはサイコキネシスの能力がずば抜けているベータ2だが、知能の方もジーンを彷彿とさせる秀でた変異種なのである。
二人は互いが考えていることがわかる。目に見えないリモート通話用のヘッドセットを付けているようなものだ。
(先程も自己紹介したけど、僕はスカイ。君はレナちゃんで良かったかな?)
(はい)
(さっきはよく頑張ったね。疲れてない?)
スカイはレナの顔を見ながら言った。その凛とした鋭い目は幼児のそれとは思えない。レナは子ども扱いするスカイに答えた。
(大丈夫です。あの、私見た目は子供ですけど、もう少し普通に話していただけますか?)
(え? 普通に?)
(そうです。私はテレパシーなら普通に成人並みの会話が可能です)
(あ、そうなの。ごめ……いや、すみません……)
スカイは反省した。無意識の内に幼児に対するような上から目線での話し方になっていたらしい。失礼だった。
(君は……どこの出身? その力はいつ頃からどういう風に使うようになったの?)
レナは溜息をつく。
(はぁ。あなた、まだ子供向けの話し方。それから、初対面でプライベートな事聞く訳?)
(いや、そう言うつもりじゃ……)
(私から先に質問させて。あなたは今の所、唯一の男性のベータでしょ。今のベータ種の問題が最終的にはどうなると考えている訳? もしくはどうなるべきかと?)
この子は恐るべき9歳だ。超能力自体もそうだが、知能の発達が早すぎる。見た目とのギャップがありすぎて話しにくい。
(スカイ、人をモンスターみたく考えていないで、答えてよ)
まずい。テレパシーだから全部筒抜けだ。やりとりがしにくい。
(テレパシーでなく、普通に会話しないか?)
(それだと、まだ子供だからうまく話せないよ。テレパシーの方が私には遥かにいい。こんなに活発に会話できるのは初めてなんだから、テレパシーのままでさせてよ)
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