浩梓情
牡丹のボタン
第1話 始まり
この世には三つの界が存在する。それは天界、人間界、魔界に分けられる。天界には仙人が門を建て、弟子をとり、師として己の流派を教えていた。そして魔界では、邪の流派を鍛えた者たちが同じく門を建て、弟子を取り、育てていた。仙人でも邪を鍛えてもない者たちは人間界で家を建て農業を繁栄させ暮らしていた。
しかし、天界に住む者たちは邪の流派を鍛えることを嫌悪し、また魔界の者たちも天界の者は偽だと言い、嫌悪していた。
そしてそれは戦さを呼び、三界を滅びへと向かわせた。
三界が滅ぶことを恐れた人間界の者達が天界と魔界に呼びかけ、話し合い、長きにわたる戦さを終わらせ、三界不戦条約を結んだ。
それ以来、三界は互いに関わることもなく各平和に暮らしていた。
「これが三界不戦条約ができた大体の経由だよ。魔界と天界は特に仲が悪かったんだ。でも今は不戦条約も無くなって魔界、天界関係なく交流し合ってるんだ。」
「ふーん、じゃあなんで不戦条約が無くなって、魔界の者も天界の者も交流しあって一緒に学ぶようになったんだ?戦が起きて大変なことになったから不戦条約が結ばれたんだろ?」
「それは話すと長くなるな〜」
〜約600年前〜
「梓睿(ズールイ)様、早くしないと師匠がお呼びです。」
「え〜待ってよ〜、まだ履き物を履いていない。父上はいつも急すぎる。」
「お言葉ですが梓睿様、すでに昨日お伝えしましたよね?」
「あれ、そうだっけ?昨日は何も覚えてないや。」
「っ!また飲んでいらしたんですか???あれほどお辞めになってくださいと何度もうしたら、、!!!」
「昨日だけだって〜、そんな怒んなよ子墨(ズームォ)眉間のしわが跡になるぞ〜〜」
「誰のせいですかっ!!!もう、、、っ早くしてください!師匠に怒られても知りませんから!」
そう言って子墨は急足で部屋の扉を開けて外に出ると、思いっきり扉を閉めた。
バタンッ!!!
大きな音に驚き、俺は急ぎめに準備を進める。
どうやら子墨が言うには、長年、三界不戦条約が結ばれていたが天界で一番力を持つ南峰清雲(ナンフォンセイウン)の現宗主、南燗流(ナン・カンルー)が、その息子であり一番弟子の南浩宇(ナン・ハオユー)を次期宗主に任命することになったらしい。
それでなぜか三界のお偉いさん方が三界会議を開き、過去のことは水に流し、共に交流し、より優秀な仙人を育てようじゃないか〜ってことらしい。正直どうでもよすぎる話だ。なんてことを許可したんだ父上は。
そう、俺は魔界で一番権力を持つ黒嵐門(コクランモン)黒雨(コク・ユー)の息子、黒梓睿(コク・ズールイ)。自分で言うのもなんだけど、自由奔放の陽気者だ。
「やっと来たかバカ息子め。一体何分待たせるんだ。巳の刻だ。」
「まぁ、来ただけ偉いってー」
「はぁ、くれぐれも天界で面倒ごとは起こしてくれるなよ。ちなみに、南峰清雲の教訓は天界中でも屈指で厳しいらしいぞ。さぞかし罰も厳しいだろうな。」
「なんてところに連れてくんですか父上!!!」
「お前を根から鍛え直すように言ってある。しっかり修行に励めよ。」
最悪だぁ、しかも聞いたところによると酒も飲めないらしい。はぁ、、、やっていける気がしない。
やっと天界に着いた。結構かかるのが不便だ、これじゃ逃亡してもどこに向かえばいいか分かんないな。
それにしても見たことのない作りの建物ばかりだ。これはちょっとだけ楽しめそうじゃん、天界。
「おや、これはこれは雨先生よく来てくださいました。」
ほう、これが南峰清雲の現宗主、南燗流か。さすが天界のトップは流れている霊力が違うな。
「こちらこそ、この度は我ら魔界の者どももお呼びくださり感謝いたします。」
「ほら、挨拶をしなさい。」
父上は俺を引っ張り前に引き出した。
「ご挨拶申し上げます宗主、黒梓睿と申します。」
「君が梓睿か、天界までの道は長い。疲れただろう、あちらでゆっくりしなさい。浩宇もいるだろう。これから学友になるんだ、一緒に話でもしてきたらどうだ。」
「ご気遣い感謝いたします。では、お言葉に甘えて、あちらに行かせていただきます。」
宗主には本当に感謝だ。天界では流れる空気が魔界とは少し違うようだ。きたばかりでは慣れない。早くあそこの部屋で休もう。
俺はそうしてきた部屋に入った。
「、、、美しい。」
浩宇がこちらを睨みつけるように見たことで、俺は自分が思わず気持ちを口に出していたことに気づく。
しまった。。
「いや〜、天界の建物は中ですらどこも美しいなぁ、、、あはは、、なんて〜、。」
「、、、」
いや、無視かよ。浩宇様は噂どうり堅物そうだな。、、にしても本当に顔が整っているな。魔界でもいろんな美男美女を見てきたが格別だ、、これは思わず口にしても仕方ない。
「、、、立ってないで座ったらどうだ。」
喋れるのか!?
「あ、あぁ、ありがとう。浩宇だよな、俺は梓睿だ。よろしく。」
「知ってる。父上との会話を聞いていた。」
「そ、そうか。」
え??それだけ?もっとなんかこうないのかよ!くっそ、地味に気まずいな。
「、、、、」
なんだ?なんか言いたそうだな。いえばいいのに、もしかしてこいつ、、、堅物とか冷淡とか言われてるけど実はただ人見知りしてるだけなんじゃないのか!??
「、、、魔界って、どんなとこなんだ?」
やっぱそうだ。やばいこいつが可愛く見えてきたぞ。
「どんなとこっていうと?」
「景色が綺麗な場所とか、街とか、やはり天界とは全く違うのか??」
「そうだな〜、魔界の方が街は賑やかだな。景色は、、今度は阿宇(アーユ)が魔界にきなよ!そん時に教えてあげる。口で言うのは難しいからな。」
「!?」
あはは!やっぱりすごく驚いてる。面白いな〜
「そ、そうか、では機会があれば。、、、その、、」
「ん?どうした?」
「、、、阿睿(アールイ)が連れてってくれ。」
「!!!?えっ、、」
ま、まさか浩宇殿がそう返してくるとは、、言うのはよくても、こうして言い返されるのには慣れてない。
、、、顔が火照ってきそうだ。
「ふっ、なるほど、阿睿は言い慣れてはいるが言われ慣れてはいないのか。顔が少し火照っているぞ。」
「ッッ!!こ、これは浩宇のせいだ!!!」
「おや、これは残念だ。せっかく親しい呼び方をしてくれたのに、。」
「二度と呼ぶか!」
くっっ!前言撤回だ!やっぱりこいつは堅物でも冷淡でも、人見知りでもない!ただの変なやつだ!俺の反応見てニヤニヤしやがって、、、この、この変態!!!
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