断片

 ある夏みた花火のことは色から忘れていくけど、見られなかった花火は見られなかったことを忘れない。付き合った人がなぜ好きだったかは忘れていく。


 でも、付き合わなかった人をなぜ好きだったかは簡単に忘れない。あえて行かないことで永遠にしておきたい場所もある訳で。


 触れなかったものの方が、もしかすると忘れがたいのかもしれない。

それでも、触れることをやめることはないのだろうけど。


『断片』より

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