第50話 お前って幸せ者だよな・・・

 入浴を始めたティオとアギト。


 体を洗い終えた2人は湯船に浸かっていたが、ティオは安心しきったような表情で暖まっていた。


「なんだよそれ・・・?」


「えへへ、僕家だといつもお姉ちゃんが一緒に入ってくるので・・・男の人とこうやって入るのは初めてなんです・・・」


「おま!?リタと風呂入ってんのか!?」


 ティオのとんでも発言にアギトは赤面した。


 それを話したティオ本人も赤面していた。その顔は真っ赤であった。


「ティオ、お前、リタ・・・姉ちゃんの事は好きか?」


「え・・・?」


 "義姉リタの事は好きか?"


 唐突なアギトからの質問にティオは驚いたが、その答えはすぐには出せなかった。


「あいつってさ、なんというか昔からああだから…」


「どういう意味ですか?」


「俺があいつにあったのが5歳の頃だったかな?」




 ーー8年前


 各領主による会談が行われる事になり、アスタルト家からはガイア、クエルトス家からはアギトの父親であるライド・クエルトス、そしてその他領主3名が王国の集会場に招かれていた。


 リタはこの時、ガイアの会談が終わるまでの間に集会場の託児所に預けられていた。

 その時に、同じく託児所に預けられていた、アギトと出会った。


 アギトは当時リタをあまり相手にしていなかったが、彼女の方からグイグイ来ていた為に一緒に遊ぶ事になった。


 以降、これがきっかけとなりアスタルト家とクエルトス家に友好関係が生まれて現在に至った。



 それからはアギトはリタと互いの家に行って遊びに行き来する仲となり、その経緯からテレシーとも仲良くなったのであった。





 アギトがリタと出会って1年後・・・。

 アギトの母親のトワイが昏睡状態に至るあの事件が起きた時の事であった。


 失意のどん底に至ったアギトは、生きる意味を無くし自害しようとしていた。



 しかし、それを止める者がいた。


 そう、リタであった。



「ダメだよ!そんなことしちゃったら!アギトが死んじゃったら、お母さんが起きた時に悲しむよ!」


「でも、母様は・・・」


「信じてあげようよ!でしょ!」



 この言葉によりアギトは思いとどまり、自害を止めた。



 そしてこれがきっかけとなりこの頃から、アギトはリタに好意を寄せるようになったのだった。



 ーー現在


(よく考えたら、俺はあの時からリタに・・・)


 リタに好意を寄せたきっかけを思い出したアギトは、ティオの顔を見つめて彼に話した。


「ティオ、お前って幸せ者だよな・・・」


「え?」


「リタってさ、困っている人を放っておけないから、お前もそういう所を好きになったんだろ・・・」


「はい・・・」


 ティオは良く分かっていなかったが、リタに対する「好き」の想いに違いはないと思い軽くうなずいた。



 2人は入浴を置けて脱衣所にて服を着てリタ達と風呂を交代する事になった。


 リタはセリアと入浴を楽しんでいた。


 しかし、ティオと入れなかった事を微かに不満に感じていたのだった。



「あ、いけね!」


「どうしました?」


「忘れ物!」


 アギトは風呂場に忘れ物をしてのを思い出して引き返した。


 すると運悪く、風呂上がりのリタとセリアに遭遇してしまい・・・


「・・・・・・!?」


「きゃあああああああああああ!!」


「あああああああああああ!!」


 アギトは風呂桶を投げつけられてしまい、気絶してしまった。


「あああ!アギトさん!!」


 遅れてティオもやってきたが、リタの反応は・・・


「あ!ティオ!」


「お、お姉ちゃん!?アギトさんが!」


「急に覗いてくるから!」


「僕も来ているのに、僕には何もしないの?」


「ティオは可愛いから!見られても大丈夫よ!」


「・・・・・」


 ただ忘れ物を取りに来ただけであったのに、この反応の違いはなんなのか、意味が理解できなかったティオであった。

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