第17話 大事な親友だから!
ーー『キレイヌ商会』
かつて商会の会長であるグルワ・キレイヌが起こした起業が大成功した事で巨万の富を得て今では世界各地でその名前は知れ渡っている世界的な豪商。
主に扱っているのは"薬"である。
キレイヌ商会が扱っている様々な薬は会長にして薬師でもあるグルワが手掛けた物が多数であり、その実績は今もなお朽ちることはなかった。
数年前、アスタルト領に訪れた際、領主であるガイアの掠り傷を治す際に塗り薬を提供した事がありそれを機にアスタルト家とキレイヌ商会の間に交友関係が生まれ、現在に至ったのだった。
場所は変わって、草原の真ん中。
その道を1台の馬車が歩いていた。
その馬車に乗っている者達こそが、キレイヌ商会の会長"グルワ・キレイヌ"と娘である"テレシー・キレイヌ"、そしてテレシーのお付きのメイドの"ミーシア"であった。
(久しぶりにリタに会える…リタ…リタ…)
「は、はあ~!!」
会長の娘であるテレシーはリタに会える事に緊張して赤面していたのだった。
「テレシー、そんなに緊張しなくてもいいだろ…リタ嬢に会うだけなのに…」
「だからですよ…いつもは手紙だけで、最後に会ったのは3ヶ月前で…はあ~!!」
「お嬢様、落ち着いてください…」
緊張がピークに達してしまったテレシーは、そのままメイドのミーシアに背中をさすられ落ち着くのだった。
一方、アスタルト家では、キレイヌ商会をお招きする為の準備に励んでいた。
使用人は邸内を掃除し、調理係はお茶の準備…。
そして、リタもまた、キレイヌ商会をむかえる準備をする為にティオとキッチンにいた。
「リタ様、ティオ様、お2人共何をなされているのですか?」
「あ、キレイヌ家の皆様にクッキーを焼こうと思って…」
「あは!クッキー!クッキー!」
リタとティオはクッキーを作る事にした。
ティオはリタからクッキー作りの工程をある程度聞いたのち作業を手伝っていた。
尤も彼の場合、「早く食べたい」という欲望が胸のうちにあった事も含まれていた。
そして時間は流れて、いよいよキレイヌ商会がアスタルト邸に到着し、それは邸内にいる全員に知れ渡った。
ーー応接室
そこにはガイアとグルワ、そして双方の付き人等が数人対峙するかのように構えていた。
「お久しぶりです、ガイア侯爵」
「おう!随分とな!グルワ!」
ガイアとグルワは久しぶりの対面な為に、気さくにあいさつを交わした。
「グルワさん、長旅お疲れ様です、クッキーいかがですか?」
リタはそう言うと、クッキーを体躯さん乗せたお皿を持ってやってきた。
「おう、リタ嬢ひさしぶりだな!相変わらず可愛いな!というかちょっと見ねえうちにまたべっぴんになったな!」
「おい!あまりリタをからかうな」
「おっと、すいやせん!」
軽いジョークを言い放ったグルワ。リタの傍にいたティオは、そんな彼を見て「悪い人じゃない」と心から安心していた。
「お、もしかして、その坊主が新たに息子として迎えたって言う?」
「ああ、ティオだ…ティオ、挨拶しなさい」
ガイアに言われてティオはグルワに挨拶をした。
「初めまして、ティオ・アスタルトです…よろしくお願いします」
丁寧にグルワにあいさつを交わしたティオ。そんなティオを見てグルワは微笑んだ。
その時、リタが彼に話し掛ける。
「あの、所で…」
「ん?どうした?」
「テレシーは?」
「ああ、あそこだ!」
グルワが指を指した方向に確かにテレシーは居た。そこはカーテンの中で微かに顔が隠れていないほどにカーテンで姿を隠していた。
「テレシー!」
「きゃ!リ、リタ…」
リタが元気よく挨拶をした反面、テレシーはまだ恥ずかしがっていた。
「久しぶりね!」
「う、うん…」
「お姉ちゃん…?」
「ん?」
そっとティオも2人に近づいた。
「この人がテレシー…さん?」
「そうだよ!お姉ちゃんの大事な親友のテレシー!」
「は、初めまして…テレシー・キレイヌです…」
もじもじとした体制でテレシーはティオに自己紹介をした。まだ恥ずかしがっている姿が2人の目に映っていた。
「テレシー、私の部屋にいこ!」
「え?」
「いいじゃないか!子供は子供同士で!」
「テレシー、行ってきなさい!」
「では、私も!」
「待って!僕も!!」
父親達に後押しされる形でリタはテレシーを連れて部屋に向かった。後を追う形でティオとテレシーの付き人のミーシアも共に…。
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