科学とあの子とトリケトラ――超能力は使えないので、「運」で乗り切ろうと思う。――
京巧桃
読まなくてもいいプロローグ
平凡な日常を過ごしているうちに、この世界に違和感を感じることがある。
果たしてこの世界は本物なのだろうか、我々はシミュレーションの中で生きているのではないか、などといったことは誰しも考えたことがあるのではないだろうか。
無論、考え始めるときりがないのであるが。
有名な話で、「世界五分前仮説」というものがある。
文字通り、「世界は実は五分前に始まったのかもしれない」という仮説だ。
偽の記憶を植え付けられた時点で世界が始まったかもしれないと言われてしまえば、五分以上前の記憶があることは反証にはならない。
その仮説がまさかまさかの真実であろうが、ただの空想に過ぎないものであろうが、そんなことは結局俺には関係がない。
記憶について考えてみたこともある。
そもそも記憶の過程で重要な、認識というものには、必ず何らかの齟齬が生じる。
俺から見て白だったと記憶しているものは、実は他人から見れば黒だったものなのかもしれない。
例えば俺が小学生のころ友達だと思っていたサイトウ君は、俺のことを友達などとは思っていなかったのかもしれない。――この話は止めよう、ちょっと心が痛くなってきた。
とにかく、この世界で起こった事実に、世界の本質に、一ミリの誤差もなく追従できているものなどいないのだ。
もしもそのような存在がいるとするならば、人々はそれをこう呼ぶだろう。
「神」と。
まあ、脳内でくだらないことを数百字にわたって語ったのであるが、俺にとってはこの世界が何であろうと、そんなことを気にする必要などないのだ。
取り敢えず俺は、今目の前にあるこの障壁を、乗り越えなければならないのだから。
「首都高校東京 能力開発科 新入生入学後試験会場」
――清々しい青空の下、彼はそんなことを考えながらゆっくりと会場の門をくぐっていった。
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