不幸だった三つ子(js)をお金の力で甘やかしたら…

プロローグ

 俺は帆立ほたて しゅん、高校一年生。俺には金を稼ぐ才能があるのか、どんなことでも簡単に利益が生まれる。小説を書けばすぐにメディアミックスする大ヒット、Vtuberとして配信すれば大人気、更に株でも大成功。この年で既に銀行口座には100兆を優に超える残高がある。


 それだけ聞くと俺を羨ましく思うだろう。だが、俺にはそうするしかなかった。…誰からも愛情を貰えなかった俺が生きていくためには、自分で稼ぐしかなかったから。


 俺の父親は俺が生まれる前に離婚していた。そして、母親は必要最低限の世話しかしてくれなかった。基本的に家で独り、たまに帰ってくるときは毎回違う男の人を連れていた。そのときは俺のことを見て嫌そうに帰っていく人もいる。そして母親は不機嫌になると物を投げ飛ばしてくる。俺には身を縮こませることしかできなかった。「あんたなんかいなければよかったのに」そう言われたことも一度や二度ではない。そんな母親だったから、家事なんて全くやってくれなかった。全部俺が自力でやるしかなかった。生活費は毎月五千円。それだけを頼りに必死に生きていた。


 そんな生活だから、学校では明らかに浮いていた。勉強道具もろくに買えず、食事も充分に取れず、ストレスで眠りも浅い。さらに、お風呂なんて贅沢もできない。当然俺は虐められた。だけど、俺にはどうすることもできなかった。


 俺はそのときの気持ちを文章につづった。こんな酷い環境で生きてるのは自分だけじゃないんだ、そんな安心感がほしかった。そして偶々母親が連れてきた出版社の人の目についたそれは運良く書籍化されて、そのリアリティが話題となり沢山売れた。


 俺はその金ですぐに家を出て独りで暮らし始めた。…いや、母親に追い出されたと言った方が正しい。「あんた、お金を稼いだんですってね。なら、もう支援なんて必要ないわね。ならお礼として50万ほど置いて出ていきなさい」それが母親の最後の言葉だった。


 それから俺は収入のほとんどを使って家を買った。なるべく大きな一途建てがいいと言ったら、三階建ての立派な家になった。…もしかしたら母親と仲直りして一緒になるかもしれない、そう思ってたのに一度も俺以外が足を踏み入れることはまだない。それから、スマホも無いと不便だろうということで最新のものを買った。


 それから俺はスマホを使ってVtuberを始めた。最初は本の紹介が簡単にできればいいと思ってたけど、どんどん俺の配信を楽しみと言ってくれる視聴者さんが増えた。そして収益化、というものの条件を満たして組み込めば、一回の配信で普通の人が一ヶ月で稼ぐような額を稼げるようになった。


 自分の暮らしが安定してきたことで心に余裕が生まれた俺は稼ぎを株に変換することにした。俺には趣味や目標なんてないからそれを他の人に託したかった。世界を良くするために頑張ろうとしている企業に生活で必要な分以外のほぼ全てを注ぎ込んだ。すると、なぜか俺が買った株はほとんどが値上がりして、俺の所持金もどんどん膨れ上がっていった。



 そして、今日。母親が死んだと聞かされた。小一の頃から会ってない俺は何とも思わなかった。

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