第47話 たとえ白いものでもわたしが黒いと言えば黒であって、翌朝のわたしがあれはやっぱり赤だといえば赤なのである

 わたしはディベートや討論をするのが好きではないです。厳密に言えば、「日本人と」という言葉が頭にくる。あれは平等な立場からより良い結論を導き出す団体プレーではなく、単純に言論を使った戦争でしかないからです。結果が全てで手段は問わない。なので、今でもなんだかんだ和を重んじてしまう日本人の気質にはあっていないと思うのです。

 

 あなた方は、説得力というのは、お行儀の良い学校で習ったように、数値や文章などからの出典や根拠が重要だと思っているかもしれません。ですが、それは大事な要素ではありますが決定的なものではありません。説得力において一番重要なのは「あの人が言うんだから」という、被服従精神から来る歴史(経験)と安心感なのです。

 

 小説や創作論もそうです。とにかく言い切る。言い方や例えを変えながら繰り返し訴えていく。内容に反論させぬよう、論点や話に隙を見せつつ、読者が指摘する前に先回りして埋め、批判する気力を奪う。常に原理原則と一貫性に相手を引きずり込んで相手の薄っぺらい思いつきを圧死させる。そして最後は「あの作家が言うのだから仕方ないか」と、半ば諦めさせる形の服従へと持っていく。そこまでいけば、あとはにっこりと微笑んで優しく頭をなでてあげる。こうすることで、あなた方の説得力は担保され、「作品にリアリティがある」と読者に思わせることができるのです。


(ちょっと厳つい創作論 没原稿より)


※ここまで教えてしまうと、ある種の危険思想になってしまうので没に。みなさんはこんなことを考えてはいけませんからね!(2024.3.18)

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