Sid.74 豊穣の女神と二人きりの時間

 心愛には本当に申し訳ない、と思う気持ちはある。

 だがしかしだ、俺にとって女神は絢佳さんただひとり。唯一無二の絶対神でもあるわけで。

 暫し目を瞑らせてもらおう。

 心愛は居ない。俺の中から消し去り絢佳さんとの時間を過ごす。


 さっきから爆発しそうだし。

 部屋に戻って絢佳さんの言葉を反芻する。


「好きだから。翔真君のこと」


 元より憧れていて癒しを与えてくれて、苦しい時に慰めてくれた。

 母親としての面もあるし、でも、そうじゃないことでも。


「裸で居ても大丈夫なの」


 あかん。

 この言葉は強烈すぎた。ばるんばるんが、家のどこでも揺れ放題。どうせだ、階段を上ってくれて俺は下から見上げる。凄い光景になりそうだ。

 早く旅行に行け、親父。そして俺と絢佳さんの甘く蕩けそうな日々を。


 翌日になるとやっぱり来る心愛だ。

 早々に行為に及ぼうとするが、少し休ませるべきとして断った。熊の避妊具はしっかり枕元に忍ばせてあるが。

 これは心愛専用だな。

 絢佳さんとはもっと大人向けのがいいと思う。


 親父の北欧旅行当日。


「じゃあ行ってくる」

「ママも来ればいいのに」

「ごめんね。翔真君の世話もあるから」


 大切な時期だから安易に旅行に連れ出せない。だから一緒には行けないと言ってる。絢佳さんが居ないと誰が面倒見るのか、って話だ。

 食事だって手抜きになるのだから、そこはしっかり管理するのが母親、としてションベンガキを振り切った。

 残念だったな。絢佳さんは親父の居ない十日間、ひたすら女になるのだ。

 萌え捲るぞ。


 門の前で見送りをする絢佳さんだが、俺は玄関先で済ませている。

 ションベンガキなんぞ見送っても意味がない。無視されてるし。


 二人が車で移動すると振り向く絢佳さんの表情がエロい。


「翔真君。お待たせ」


 ヤバいな。興奮しすぎて眩暈を生じそうだ。

 家に入るとしっかり施錠して、ダイニングに向かうが、なぜ?

 ダイニングの椅子に腰掛け、よっこいしょ、ってな感じでばるんばるんを乗せてる。


「あの」

「用心のため」

「えっと」

「忘れ物とか、伝えることがあるとね」


 戻ってくることも。

 別に親父から許可は得ているから問題は無いが、ションベンガキが目撃したら、ションベンガキと絢佳さんの親子関係が壊れる。

 だから戻ってきた場合に備え、今暫くは我慢して、だそうだ。

 そう言うこともあるのか。確かにションベンガキに目撃されたら、目も当てられない事態に陥るな。


 ここはおとなしく椅子に腰掛ける。

 俺の対面に腰掛ける絢佳さんだが、家計簿を広げレシートを見ながら、せっせと記入を始めた。


「いつも夜やってません?」

「翔真君。逸らないの」

「あ、いや。そうじゃなくて」

「このあと、期待していいから」


 夜に付ける家計簿を今のうちに処理する。つまり済んでしまえば余計なことは一切しない。

 そう言うことか。

 ならば俺は黙っているべきだな。


 電卓を叩き計算し財布の中の金を広げ、勘定してスマホの画面も見て、細かくチェックしてるようだ。


「お金の出入りの管理は大切だから」


 まあそうだろうな。親父はザル勘定だったようだが。稼げるから気にしないのだろう。俺が使う額など知れているし、親父は外で好きなだけ使っていただろうし。

 家計にゆとりがあるかどうかなんて、俺も一切気にしなかった。

 まあ生活が破綻して無いのだから、ゆとりは充分あるとは思うが。


「生活費って余裕あるんですか?」

「うん。最初に受け取った通帳だけで、標準家庭なら百年分」


 その頃には墓の中だ。墓だの永代使用料も込みにできるな。

 つまり標準家庭換算で使いきれない金額。五億とか言ってたっけ。

 年間五百万を消費したとすればだ。もしそれより低い可処分所得しか無いと、もっと長期ってことになるな。

 どこでそれだけの額を溜め込んだのやら。


「絢佳さんは贅沢したいと思わないんですか?」

「そうねえ。贅沢より日々を楽しく、かな」


 素晴らしい人だ。億の金を手にしたら殆どの人は、贅沢三昧であっと言う間に使ってしまうだろう。所詮はあぶく銭の感覚で。自分で稼いだ金じゃないから、使う上で何ら躊躇もしないだろうし。浮かれて散財するわけだな。

 その点で絢佳さんは実に堅実な人だ。だから親父が通帳をポンと渡したのかもしれん。


「贅沢するより翔真君と楽しく過ごしたいから」


 でれでれに蕩けそうだ。

 こんなことを言われたら、とても親子の関係なんて無理だっての。

 家計簿を付け終わると「お待たせ」と言って、椅子から立ち上がり「どんな格好を望むのかな」とか言ってくれてるし。

 ばるんばるんが揺れ動き捲る、スーパーアトラクションを。


 ばるんばるんライドなんて最高だろ。

 何だか知らんけど。


「えっと、裸」

「翔真君もだからね」


 まあそうだろう。俺だけ服を着て過ごすなんてあり得ない。

 じゃあ二階に行こうか、と言って俺の手を取り向かうのだが、階段を並んで歩き二階に着くと絢佳さんの部屋に。


「そう言えば入ったこと無かったです」

「うん。この部屋は普段使わないし」


 絢佳さんの洋箪笥やワードローブが置いてある。まあ衣裳部屋みたいになってるわけで。

 シャツに手を掛ける絢佳さんだが、手が止まると。


「あのね、旅行先だけど」


 変更するそうだ。


「一週間あるでしょ。だから北海道はどうかな」

「あ、いいですね」

「大祐さんに言って別荘を用意してもらってるから」


 北海道にもあるのか。まあ日本全国で浮気してれば、至る所に隠れ家がありそうだよな。

 ホテルなんて足の付く場所で密会をするはずもない。人目を憚らず愉しむための秘密の場所だ。俺も母さんも連れて行ってもらったことはない。


「北海道のどこです?」

「有珠駅から程近いオーシャンビューの別荘みたい」


 オーシャンビューだと? また洒落た場所に別荘を建てたものだ。海を見ながら浮気相手に「君の方が美しい」とか、寝言ぶっこいてたのか。

 よく絢佳さんもそんなの許してるな。まあでも、代わりに俺とやり放題だし。

 好きなだけ浮気していればいいってことで。


「洞爺湖も近いから息抜きもできるでしょ」

「そうですね」


 海で泳ぐのは無理か。

 水が死ぬ程冷たそうだし。


「ビーチも近所にあるけど泳ぐのは無理かな」


 なんと。ビーチまであるのか。

 そう言いながら服を脱いで下着姿になってるし。もう目を皿のようにして隅々まで見てしまう。


「翔真君。見すぎ」

「いや、だって」


 笑いながらブラを外し待望のばるんばるんだ。相変わらず凄まじい。

 更に下も脱いでしまい、しっかり披露してくれてる。


「おばさんなのに」

「いえ。美しさと尊さがあります」

「無いでしょ」


 あるんです。最高の女神。豊穣の女神としての神々しさが。

 肉付きいいなあ。


「翔真君、なんで服着てるの?」

「あ、そうだった」


 速攻まっぱだ。

 勢いが付き過ぎてパンツを脱ぐと同時に、跳ね上がる俺の愚息だけどな。それを見た絢佳さんが「元気すぎ」と照れた感じで言ってる。

 両手を広げ「来て」と言う絢佳さんが居て、フラフラと吸い寄せられる俺が居る。

 抗うなんて不可能だ。

 顔を埋め息を吸い込むと、脳みそをガツンと刺激する絢佳さんの香り。


「凄い当たるんだけど」

「好きにしてください」

「逆だと思うけど」

「じゃあ好きにします」


 このあと互いにケダモノになったのは言うまでもない。

 ついに絢佳さんとも決めてしまったからな。

 心愛と違い俺の動きに合わせて、ばるんばるんが跳ね捲るから勢いが止まらなくなってしまった。

 目が回る程の跳ね具合は何ものにも代えがたい。


 ベッドの上で気怠い雰囲気を味わう。

 親父と絢佳さんのベッドルームだ。俺の部屋だと心愛が勘付きそうで。他の女と寝てたとか言われるとな。絢佳さんに夢中だとは知っていても、嫉妬が激しそうだからな。

 知らぬが仏だ。

 まじで悪いとは思うけど、目の前の女神には逆らえん。


「壊れるかと思っちゃった」

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