Sid.41 愛に葛藤していた豊穣の女神だった

 俺に背を向けたまま、何やら藻掻く絢佳さんが居る。


「着たままじゃ無理かな」


 するっとブラウスを脱いでしまい、ずれたブラ紐と綺麗な背中が披露された。

 目の前の姿態に目を奪われるし、ブラを外してソファに置くが、零れそうなばるんばるんが見えてるんだよ。先端は背を向けているせいで見えないが。

 実に重そうで柔らかそうで、後ろから抱え持ちたい衝動に。

 再びブラウスを着ると俺の方を向き「しょう……」と言葉に詰まったが、その理由は即座に理解できた。


 パンパンになった股間に視線が向いたからな。

 あとはあれだ、俺の目。血走ってなかろうか。


「あ。えと、翔真君」

「へ、は、はい」

「ちょっと刺激が強すぎたかな」


 そう言いながら頬を赤らめキッチンに向かう絢佳さんだ。

 つい、目で追ってしまうが「よいしょ」なんて言葉を漏らし「あ、やっぱり楽」と、椅子に腰を下ろしテーブルに乗せて寛いでる。

 俺を見ると「翔真君。つ、づ、き」とか言って肩を指さし、どうやら肩揉みを続行して欲しいようだ。

 断る理由も無いし、絢佳さんに触れられるからな。

 突っ張る股間は如何ともし難いが、キッチンに行き絢佳さんの後ろに回る。


「えっと、デコルテでしたっけ」

「そう。それとね、大胸筋だったかな」


 三角筋、僧帽筋、大胸筋の三つを解すことで、コリの改善に役立つらしい。

 ブラの紐が無くなったことで、マッサージがしやすくなった。背中や首回りに肩回りを入念に揉み解し、次は前をと手を当てるが、指が。

 テーブルに乗せているせいで盛り上がってるし、位置が上に来るから、どうしても柔らかさがダイレクトに伝わってくる。

 沈み込むんだよ、指が。むにゅっとした感触の中に。


「遠慮しなくていいから」

「あ、う、はい」


 もう意識が飛びそうだ。

 ずぶずぶ沈む指先の感触。


「脇から救い上げるように揉んでね」


 それは、ばるんばるんを揉み上げろと?

 いや、何だか分からんが脇に手を入れると、くすぐったいのか体を捩ってるし。

 すげえ感触だ。手に伝わるあり得ない程の重量感。飲み込まれるような指先。支えるように持ち上げると撓むし。

 くらくらする。


「翔真君、なんか少し違うんだけど」


 ばるんばるんを揉んでいるのであって、筋肉を揉み解す、ではなくなっていたようだ。


「ごめん」

「もう。気持ちは分かるけどね」


 怒ってはいない。

 身を任せる感じの絢佳さんだし。

 暫くマッサージをしていると「凄く楽になった。ありがとう」と言われ、至福の時間は残念ながら終わってしまった。

 もっと触れていたかったが、今後も機会はあるってことだし、焦る必要は無いな。

 だが、股間は収まりそうにない。漏れてるかもしれん。


「あの、トイレ」

「あ、どうぞ」


 少し前屈みの姿勢で移動し、キッチンを出てリビング横にドアがある。開けると廊下があり突き当りにドア。たぶんそこがトイレだろうと踏んで、向かって行き開けると、ちゃんとトイレだった。

 トイレに入ってジーンズを下ろし、パンツも下ろすとやっぱりなあ。少々漏れ出て染みてるし。

 着替えたいけど今それをすると、絢佳さんにバレるわけで。

 仕方ない。収まることを知らない俺を宥め、すっきりした時点で再び穿き直す。


 童貞って、刺激に弱いなあ。


 トイレを出ると右手に引き戸がある。開けてみると洗面脱衣室のようで、洗面台と洗濯機が置いてある。その奥が風呂場だな。

 ついでに風呂も見てみる。

 洗い場が広く浴槽も大きい。浴槽のある壁側は一面が窓になっていて、眺めが良さそうだ。

 これ、絢佳さんと二人で入っても問題無いな。

 いや、それはさすがに無い。


 風呂場をあとにしキッチンに戻ると「翔真君。お昼ご飯どうする?」と聞かれた。

 ばるんばるんの位置が上がってるから、ブラを付けたようだ。

 トイレで何をしていたか、たぶん勘付いているとは思うが、それを口にすることは無いのか。まあ言われたら恥ずかしいし。

 で、飯?


「外食ですか?」

「来て早々だから外で何か食べようかなって」

「なん……じゃあ信州ですし、名産の蕎麦とか」


 何でもいい、と言いそうになった。何でもいい、は女性も困るしイラっとする、なんて聞いたことがあるからな。

 何々でいいよ、なんてのもイラっとするらしい。ネット情報だけどな。俺に経験は無いから確証も無いが。


「じゃあお蕎麦にしようか」


 と言うことで再び車に乗り蕎麦屋を探すことに。

 スマホで近隣の飲食店を探すと、結構な数があることが分かった。蕎麦屋もあって目的地を指定し移動する。

 運転する絢佳さんを見る。

 視線がチラッとこっちを向き「翔真君。私のこと、女性として好きでしょ」と、ズバリ核心を問われた。


「気持ちがね、痛い程伝わってくるの」


 でも、と。


「私は大祐さんの妻。そして翔真君は私の息子」


 ションベンガキは特別養子縁組で実子と同じ扱いだそうだ。俺もまた絢佳さんとの普通養子縁組がなされていて、法律上の親子関係が成立しているらしい。養子縁組をした理由は相続の関係だそうだ。親父の財産が幾らあるか知らないが、ションベンガキも実子同様遺産を受け取れるよう、考えた結果だとか。

 まあでも、それは些細な問題だそうで。


「息子に手を出す母親って、世間一般で見たら分かるでしょ」


 逆も然り。


「だからね、本当は何も無いのがいいんだけど」


 本来はそうなんだろう。これが絢佳さん以外の女性と再婚していたら、俺も惚れたりすることは無かったと思う。魅力があり過ぎるんだよ。そこらのおばさんと比べたら雲泥の差がある。月とすっぽんなんてレベルじゃない。

 だが、抱いてしまった気持ちはどうにもならない。


「無理だよね」


 分かってるそうだ。

 今は葛藤している最中で結論は得られていない。俺の気持ちに応えられるか、と言えば無理なはずだけど、簡単に切り捨てられないと言う。


「私もね、翔真君のことは好きだから」


 それって、息子として、だよな。男としてじゃないだろ。


「息子、ですよね」

「ううん。ちょっとだけ男性を意識してる」

「え」

「だって、見ちゃったし」


 ああ、箱根でモロ出し。

 あれで男を意識してくれたのか。なんか嬉しい。


「でもね、一線超えちゃいけないって思うし、大祐さんが居るのに息子にって」


 一度くらいはいい、なんて甘い考えも過るとか。まじか。

 貞操義務違反、なんて堅苦しい法律用語を持ち出す以前に、俺の気持ちに応えてあげたいと思うそうだ。

 倫理に悖る行為だと分かっていても。


「それでも、やっぱり大祐さんに申し訳ないし」

「分かります」

「夫だからね。私は大祐さんの妻だから、翔真君と体の関係はね」


 もう少し悩んでていいかな、と言ってる。

 急ぎはしないし。


「常識で考えれば無いのが当然です」

「翔真君がそれでいいなら」

「いいわけ無いです」

「でしょ。だから少し悩ませてね」


 どんな結論を得ようと俺に対する気持ちは変わらないと。

 俺が思うような結論に至らなくとも、嫌わないでね、だそうだ。嫌うわけがない。


「あ、蕎麦屋」


 蕎麦屋の看板を見つけナビも音声で知らせている。

 車を駐車場に入れ蕎麦屋に入った。


 席に着くと笑顔の絢佳さんが居る。

 にこにこ、なんか嬉しそうな。


「なんか笑顔ですね」

「うん。翔真君が聞き分けのいい子で助かってるから」

「それって子ども扱い」

「私から見れば、だけど、私も同じ」


 青春時代のときめきを思い出した、なんて言ってるよ。なんか可愛らしい人だ。

 食事を済ませると別荘に戻り、本来すべきことである勉強をすることに。


「じゃあ、始めようか」


 タブレットを引っ張り出し、参考書も用意して勉強を始めるが。

 トイレに行った際にブラを外してたな。手に持ちながら出てきたし。でかいのを堂々と。隠す気無いんだ。

 ばるんばるんがテーブルに乗り、気が散り捲るが、ここは目の前の課題に集中すべきだな。

 絢佳さんに呆れられても困るし。

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