Sid.31 下級生の女子からアプローチ
ションベンガキとは、今までもこれからも他人。決して兄妹になることはない。
俺はそれでいいとした。絢佳さんは何としても兄妹として、仲良くして欲しいそうだが、無理なものは無理だからな。
人間が千年も生きるとすれば、どこかで達観することもあるだろうが、生憎、人生は長くて百年程度だ。感情から来る嫌悪感はどうにもならない。
ただ、それでも旅行の際に俺だけ留守番していて、一切悪いと思わないってのもな。薄情なんてレベルじゃない。人の心が無いと言っても過言では無かろう。
どこでどう間違えて、そんな存在に仕上がったのやら。
俺からの気遣いの面もあるってのに。それを当たり前、と受け取られるとな。さすがにぶん殴ってやりたくなる。
絢佳さんは素晴らしいのに、どうして娘はクソ極まりない存在になったのか。
それだけは残念だ。
絢佳さんとの話が終わると自室に戻るが「まだ十二歳だから、そのうち気付いてくれるって信じてるから」だそうだ。
無駄なことをと思うが、自分の娘くらい信じたいのだろう。
さて、学校だが体育祭があるようだ。
参加する気はない。体育祭なんて成績とは無関係だし、そのために普段使わない筋肉を使う羽目に陥る。疲れるだけで得られるものも無いしな。
怪我をしている、と言うことにして練習からサボろう。当日は勿論、病院に行くなどと適当言っておけばいい。
だが甘かった。
「診断書を提出しろ」
こうなりゃ無理やり骨折するか。でも痛過ぎるだろうしなあ。下手すれば入院しかねないし、そうなると絢佳さんに心配掛ける。
捻挫程度だと無理のない範囲で参加しろとか、今どきあり得ない根性論も出そうだし。それでも捻挫程度はしていないと、診断書なんて書いてもらえない。
已む無し。家の二階から飛び降りれば、足を挫くだろうし骨折しかねないが。
放課後、そんなことを考えながら帰宅するが、世の中ってのは不思議なもので。
下校途中の通学路。
以前も見た下級生の女子だ。のろのろ歩いてるんだよな。タイミングよく遭遇する理由はさっぱり分からん。
追い抜くタイミングで目が合うのも定番。
「あ」
毎回、あ、ってなんだよ。
追い越すと今回は違うようで「あ、あの。待ってください」とか声が聞こえる。
面倒だからシカトして先を進むと、後ろから走って追い掛けてきてるような。
隣に並んだようで「あの。三年生ですよね」とか言ってる。
シカトしてると「あたし、一年三組の益本です」とか、勝手に名乗ってるし。
駅に向かって足早に進むと付いて来る女子が居て、振り切るのも意識してそうで嫌だし。
「最近よく会いますよね」
同意を求められてもな。会うんじゃなくて遭遇してるだけ。そして俺はあんたを、のろのろ歩く邪魔な存在と思ってる。
「先輩。名前教えてもらえませんか」
積極的な奴だな。
だが何よりも驚いたのは、俺の存在を認識できる奴が居た、と言うことだ。言っちゃなんだが、全学年の全女子から認識されていない、そう思っていたのだがな。
まあ、こいつもひと月あれば、俺の存在を認識しなくなるだろうけどな。
「先輩、聞いてますか」
聞こえているが知らんぷりだっての。
「無口なんですね」
違う。邪魔なだけだ。
少し早く歩くと、それでも付いてきて結局ホームにまで。
「先輩はどっちですか」
教える気はない。関わりたくないんだよ。どうせすぐ相手にされなくなる。明日にも俺の存在なんて、無かったことにするんだからな。バカ認定した瞬間、先輩だろうとなんだろうとな。
「さっきから何にも喋ってくれないです」
当たり前だ。
シカトしていたら「こっち見てくださいよ!」と声が聞こえ、俺の顔に手を当て強制的に女子に向けさせられた。こ、こいつ、むち打ちになるだろ。
強制的に動かされると目が合うわけで。手が離れると「人の目を見て話しましょう、って教わらなかったんですか」とか言ってるし。
知らねえよ。一方的に話し掛けられてるだけだ。
電車がホームに滑り込んできて、女子を置いてさっさと乗り込むが、しっかり一緒に乗り込んで来やがった。
「同じ方向なんですね」
俺の前に立つ、この女子は俺より背は低い。小さいとまでは思わないが、胸は間違いなく小さいな。何ら盛り上がりを見せないし。おろし金に興味はないぞ。きっと顔を当てると磨り下ろされる。
顔に関しては進学校に美人無し、だ。残念だがな。まあお陰でシカトされても気にならずに済む。
なぜ進学校に美人が居ないのか、と言えば、女子は可愛ければ幾らでも道は開ける。美人は何かと得をする。何ら努力をせずとも男が放っておかないからな。
だが、そうでない女子は努力が必要だ。認められるためにも。
結果、進学校に来る女子は何らかの努力を要する存在である。
稀に美人や可愛い子も居るだろうけどな。だが、そんな女子は高慢で鼻持ちならない存在になるだけだ。真っ先に俺のような存在を消し去る。
相手に求めるものも大きくなるからだな。そこらの男子如き歯牙にも掛けない。
残念な相手にすら存在を抹消される俺って。
なんか虚しくなる。
「先輩。どこで降りるんですか」
知らん。
答える義理は無い。
「もう、全然口利いてくれないんですね」
理解しろ。俺に構うもの好きは、今の学校に居ないのだと。いずれ気付くだろうけどな。
乗り換え駅に着くとさっさと下車するも。
「あ、乗り換えですか」
実はあたしもなんです、とか言って付いてきやがった。まさかの偶然も、ここまで来ると出来過ぎだっての。もしかして神様が余計なお世話を焼いたか?
箱根神社は縁結びの神様だったし。恵まれない憐れな子羊に、女子を宛がってやろうなんて。
要らない。
改札を抜け乗り換え先の電車のホームに向かうと、並んで歩く女子が居るし。
「凄い偶然ですね。普通は無いですよ」
だろうな。
で、どこまで付いて来る。
結局、ホームに入って電車待ちだが、隣でにこにこする女子が居る。
「下りですよね」
そこまで一緒なのか。さすがに同じ駅では無いだろう。途中までは我慢するしか無いのか。
くっそ。こういう縁は無くていい。俺には絢佳さんと言う理想の女性が居るんだよ。まあ男性として意識されないけどな。あくまで息子だが。
自宅最寄り駅に着き下車するが、当然、挨拶なんぞずるはずもなく無視して降りると。
「先輩。これって何かの縁ですよね」
ホームに降りるも呆然と立ち尽くすしかない。
俺の前に立ち頬を赤らめて笑顔を見せてる。
「運命です」
違う。ただの偶然。しかも質の悪い偶然だ。
「結ばれる運命なんですよ」
「ねえぞ」
「あ、やっと話してくれました」
しまった、と思うも後の祭りだ。
「先輩を始めてみた時、ビビッと来たんです」
ねえっての。気の迷いだし、どうせバカと気付けば相手にしなくなる。
「だから、声を掛けるタイミングを見計らってたんですけど」
やっと叶った、なんて寝言を噛ます女子が居る。
少しはしゃぎ気味で「ここじゃなくて、どこかでゆっくり話をしましょう」とか言ってるが。俺から話すことは何もない。勿論、こいつの話を聞く理由もない。さっさと帰って絢佳さんの、ばるんばるんを拝みたいんだよ。
だが、俺の腕を取ると、ずるずる引き摺るように改札を出て「喫茶店に行きましょう」とか言ってるし。
これから逃れるには、自らバカだと申告しないと駄目か。
店に入る前に告知する必要があるな。
「おい」
「あ、なんですか」
「お前の中で俺はどんな存在なんだ」
足が止まり、まじまじと俺を見つめてる。少し恥ずかしいな。女子に見つめられた経験が無いからだ。
口を開くと。
「運命の人」
「居ねえんだよ」
「でも気になってました」
「あのな」
已む無し。授業にも付いて行けないバカだと、自己申告することにしたが。
「あたしも同じですよ。授業内容が頭に入りません」
バカ同士ってことか。
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