第31話 情報収集
クラウスくんに詰め寄られています。なぜ本気を出さないのかと。
「……なぜって、あの採点用の
「そんな簡単に壊れるはずはない! 兄上は3000を超えたと言っていた!」
……ん?
総合得点は2000点満点……。
成績表から計算してみたら、
カレン先生を見る。
「学年を上がると、2000点満点じゃなくなるんですか?」
「……いえ、詳しい採点基準はお教えできませんが、満点は変わりません」
あー……来年は0.8とか掛けられちゃうのかな。そして卒業前は0.2とか掛けられちゃう?
じゃないと2000点満点にはならない。
失敗した。気を反らせるかと思ったけど、クラウスくん顔を赤くして怒っている様子。
かくなる上は浄化か……。
なんとなく良くない気もしてきている。精神面の成長はどうなるんだろう。
「お、おまえ、向上心はないのか!?」
「えっ……」
たぶん向上心はあるよ。2年間、寝ても覚めても魔法を使っていたと思う。楽しいというのもあるけど。
「どうしてないと思うの?」
「あるなら常に全力を出すはずだ!」
……そんなことないと思うけどな?
いまなにを言っても上手く関係を築ける気がしない。
こんなときこそモンスターに来て欲しい。
モンスターじゃなく、マックスが横に来た。不安。
「クラウスどの、先週から思っておったでござるが、散々恩を受けて礼を言うでもなく怒鳴りつけるばかり、どういうつもりでござるか? 恩は返せと師匠に教わったでござる」
えっ。マックスがありがたいことを言ってくれた。
クラウスくんはすごく苦い顔。納得はしていない。ふいっと顔をそむけてしまう。
でも、せっかくの第1回部活遠征。ひとまずモンスターを倒してもらおう。お話は休憩のときに。
「マックス、ありがとう。身体強化使ってモンスターを探してみて?」
「えっ……身体強化でござるか?」
目が泳いでいる。
……使ってるの見たことないかも。苦手か。
さてはそれで騎士学校じゃなく魔法学校にしたのかな?
魔法学校なら身体強化を使わなくても十分に点が稼げるのかも。
「うん。モンスターの位置を把握するのは大切だと思う。諦めずに練習してみよう。ギーゼラ、マックスにコツ教えて上げて欲しい」
「わかった」
「かたじけないでござる……」
モンスターを探すため、歩き出す。
先頭はギーゼラとマックス。すぐにクラウスくんが追った。
シェキアが俺の横に。
「ね、ね、光属性は普通に攻撃すればいい?」
トーニくんも振り向いた。
「そうだね。雷って見たことある?」
「見たことはないかな。うるさいやつだよね? 雨戸しめられてたよ!」
「トーニくんは?」
「ある……」
「えー! あたしだけないの!? 光属性なんだよね? トーニ、やって見せて!」
今度はトーニくんがシェキアに詰め寄られてる。でもこっちは明るいからいいな。
シェキアは、無理とかダメって言われるとすぐに引く。トーニくんはこっそり練習するはず。
ギーゼラがモンスターを見つけ、ひとり1匹ずつ倒していく。
イモムシみたいなやつ。人の敵というよりも畑の敵。脅威ではない。Aクラスの部員は
俺はタイミングをみて、みんなの魔力を回復。
クラウスくんも少し落ち着いたようなので、同時に浄化を使っておく。
思い立って、自分にも。
スッキリ。寝ぼけてたところに、ひんやりとした美味しい空気が来て目が冷めたみたいな感じ。
……公国と西の大国の間に壁を作ってみようか。
大国同士の間は国境線が長すぎる。
フェネカの言う通りもっと加護が欲しい。
けど、公国なら狭い。その上あの辺りは川が多い。上手くすればいけるはず。
公国は、西の大国と行き来ができなくなれば、ラングオッド王国に助けを求めてくるかも。
その前に情報収集しないと。
◆◇◆
その日の午後、まだ夕暮れというほどではない時刻。
また明日部活でと言い合って寮へ帰る。
『まっすぐ王都側の門へ向かっておるようじゃぞ』
フェネカには、カレン先生のあとをつけてもらっている。
『すぐ報告かな。ありがとうフェネカ』
速度を上げ、ディープを厩舎へ。
そして、マイボディを寮のベッドへ。
アストラルボディでフェネカを追う。
『おまたせ。まっすぐ王城行きそうだね』
肯定の波動。
それからは予想通り移動した。途中までは。
カレン先生、王城に裏から入ったよ。しかも顔パスで。
『フヨフヨ、カレン先生なにもの?』
『諜報部隊の長の娘』
もしかしてこの若さでトップかと思ったら、トップの娘か。
やがて会議室っぽい部屋に4人が集まった。
『宰相』『元帥』はわかる。けどひとり知らないおっさんが。
『カレン先生の父親?』
フヨフヨから肯定の波動。
すぐに王様が来て、挨拶が行われた。
「報告せよ」
「はい。候補ユイエル・レガデューアは、すでに再生が使えます」
すんごい端的な報告。
一瞬静まり返ったあと、カレン父が娘に目を向けた。
「他の者が使った可能性は?」
「ありません」
「具体的な部位は?」
「右の眼球を再生しました」
「眼球!?」
「……まだ、10歳では?」
「精霊が治した可能性はありませんか?」
『元帥』と『宰相』も驚いている。
眼球は難しいって認識なのかな。
治したのは俺だよ。信じて。
「まだ10歳ですが、以前報告の通り魔力量はずば抜けています。元『聖女』さまをすでに超えている可能性があります」
カレン先生は信じている様子。がんばって。
部活を見て魔力が多いと思ったから俺を筆頭と報告したのかな。
ここで無言でいた王様が机に手を乗せた。注目が集まる。
「夏休み中に1度連れて来るがよい。欠損のある者を2名、病の者を2名、元『聖女』にも連絡を」
「……10歳の男児に受けさせるのですか?」
『宰相』が問うと、王様がうなずいた。
なんか『聖女』になるための試験があるっぽい。
「陛下、もうひとつご報告が」
「申せ」
「ユイエル・レガデューアは『聖女』の称号を辞退する可能性があります」
「なに?」
「まさか、ありえません。名誉と年金を得て、激務でもなければ命の危険もない」
えー? 言ったのは『宰相』だ。
なんで男児だってわかっててありえないってなるの?
『宰相』は激務なの……?
「男だから『聖女』は嫌、と言って拒否する可能性が高いのです」
「……そんなことで?」
『宰相』だけは納得出来ない様子。
ほかの面子は渋い表情ながら「あー……さもありなん」とか言いそうな雰囲気。
……いま、『聖女』の称号名を変えるための説得方法を考えて、ふと思った。
聖属性の使い手が少ないのは、文化のせいもあったりしない?
なんというか、『聖女』さまが祈れば回復する。みたいな認識が大勢にあるように思う。
加えて手を組む祈りのポーズは女性のする仕草という認識。
男でも黒髪なら使える人がいるのに、金髪銀髪にはひとりも男がいないってところにも違和感が。
はたして男の子たちは、本気で聖属性に適性があるかどうか確認しているだろうか?
少なくとも手を組んで祈ってみたりはしてないんじゃない?
俺は、どうがんばってもアストラルボディを出さないと発動しない。
けど、だからといってすべての金髪男に適性がないとは言えない。
せっかく、はらをくくって『5英傑』に名を連ねる気になったのだから、大々的に男でも使えると発表してもらった方がいいかもしれない。
聖属性の使い手を増やすために。
まあ、増えないかもしれないけど、やってみる価値はあると思うな。
そんなことを考えているうちにカレン先生の話は終わり、退室していた。
残った面々が少し話していたが、当人である俺に直接確認するということで話は終わった。
『フヨフヨ、どうだった?』
『父、公国追い返して昨日帰ってきてる。賢者、北で戦ってる』
なんと。
つまり、いまは南方と西方は戦争していない。チャンス。
あとは公国の国家元首から穀物の輸入が終わっているか確認すれば、壁を作ってみてもいいかな。
さて、帰って夕飯だ。
なに食べよう?
しっかり栄養を取って土木作業へ向かおう。まずは公国を、西の大国タリルエス帝国から切り離す。
まあ、肉体は置いていくんだけど。
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