第13話 年上の幼馴染

いつも通りの朝が来て、

いつもの教室で授業を受けていた。

咲夜は他人になんと言われようと、悠と一緒に過ごすのはやめていない。

友達以上の関係であることも噂で広がっていたが、気にしなかった。


ある人に声をかけられるまでは。


科学室での授業を終えて、教室に戻ろうとした時、階段の踊り場付近で2人男子生徒がウロウロと1年のクラスを眺めていた。翼と一緒に教室へ行こうとすると、咲夜は声をかけられた。


「あ、そこの1年。」


 男子生徒のうちの1人。

 どこかで見たことある男子だった。


「あ、はい。私ですか?」


「そ、そう。きみ。」


「何か用でしょうか。」


相手は先輩ということがわかった。

履いていた上靴が色分けされていて

3年の場合は、赤色ラインがだった。

1年は黄色で、2年は青色だった。


「中学って西中だろ?」


「え、ええ。まぁそうですけど…。」


「咲夜だろ?」


「え?」


「俺だよ。俺。

 大谷琉偉おおたにるい。」


「す、すいません。どちらの大谷さんか。」


 咲夜は何のことかわからなかった。

 突然先輩に声をかけられるなんて

 思ってもみない。


「るーい。覚えてないの?」


「るい…。」


「咲夜、私先に行ってるね。」


翼は話が長くなりそうだと

先に教室に戻って行った。

顎に指をつけて考える。


「あー、泣き虫のルイ!?」


「…思い出して欲しくない場面を

 思い出したみたいだ。」


 琉偉は咲夜の言葉にがっかりする。


「大きくなったねぇ!?」


「何様だ。俺はお前の年上だぞ。」


「すいません、失礼しました。

 あまり昔のことなので…ついつい。」


「琉偉、何、その子、幼馴染なわけ?」


隣にいた琉偉の同級生の和俊が話し出す。


「ああ、確かめに来て良かった。

多分、そうかなって思ってたから。

文化祭の時、演奏見に来てただろ?」


「え、琉偉が演奏していた?」


「いや、見てないのかよ。

 俺、ボーカルだって。」


「あははは。気づかなかった。

 そうだったんだ。イケメンだなんだって

 友達が言ってたから。」


「イケメン?俺が? 

 そうかそうか。」


「そう、私イケメン興味ないって

 話していたところで…。」


「マジかよ。なんでその話すんだよ。

 まぁ、いいや。連絡先交換してよ。

 久々に幼馴染同士で会うって話

 あったからさ。」


「え、もしかして、

 やっさんとか

 もっくん?」


「そうそう。なんだ、覚えてんじゃん。

 ほら、スマホ出して。」


 琉偉は自然の流れで咲夜にスマホを差し出して、連絡先を交換した。


「そしたら、日程分かり次第連絡するから

 返事忘れるなよ。」


「わかった。琉偉、ありがとう。」


「先輩と呼べ。先輩と。」


「はいはい。琉偉先輩!!」


 手を振って咲夜は別れを告げる。

 教室で待ち構えていた翼がジッと咲夜を

 みつめる。


「ねぇねぇ、咲夜、どういうこと?

 大谷先輩と幼馴染って

 話聞いてないんだけど。」


「ご、ごめん。私もさっき知った。」


「詳しく教えなさい!」


 咲夜は、翼に缶詰になり、昼休みは幼馴染である琉偉の話で盛り上がった。


その頃の悠は、

咲夜からのラインの返事がないことに

寂しがっていた。

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