第3話 ステージ演奏と友情

軽音部のドラム演奏に興味を惹かれた。


さっき知り合った

同じクラスの谷林翼と

同中の坂本悠さかもとはるか

その友達の佐藤友紀奈とともに

齋藤咲夜は、新しい友達ができて

ドキドキしていた。


楽しくなるんじゃないかという

予感しかない。


咲夜は、翼の腕を掴んで、

観覧席に進んだ。


たくさんの観客の中に

4人並んで後ろの方に座る。


今演奏しているのは、

backnumberの水平線という曲だった。

ボーカルは3年の校内1人気者の

大谷 琉偉おおたにるい 先輩だった。


ドラムとギターとベースは

顔は知っているが、

名前を知らない人たちだった。

学校の生徒であることは間違いが、

みんな名前を知らなかった。


文化祭パンフレットを見ると

4人のメンバー紹介されていたが、

それどころじゃなく、

歌を聴いてうっとりしていた。


「バンドって、

 結局ボーカルを主に見ちゃうよね。」

 翼がボソッと言う。


「確かに。」

 咲夜は頷きながら答える。


「私は、ベースの人かっこいいと思う。」

 友紀奈は両手を組んで、

 キラキラした目をしていた。

 

「えーそうなの。

 私はドラムの演奏は

 難しそうって思うから

 尊敬するな。」

 

 悠は、予想外のところから

 ドラムに注目していた。


「悠の場合は、男子にそこまで

 思い入れないからじゃない?

 かっこいいってフォーカスしているところ

 顔じゃ無いものね。技術の方でしょう?」


「そう、その通り。

 私は、男子に興味ないのよ。

 歌は好きだけどね。」


 その話を聞いて、

 咲夜は、そうなんだと

 納得していた。


「咲夜、引かない?」


「別にぃ。

 個人それぞれでしょう。

 私は気にしないよ。

 そういうの。」


「そっか。

 何か、嬉しい。」


「え?

 私、何も言ってないよ。」


「ううん。ありがとう。」


 些細なことで悠は喜んでいた。


 咲夜は、疑問符を頭に浮かべた。


「そういや、さっきから

 気になってたんだけど、

 悠のその包帯って怪我したの?」


 咲夜は、悠の腕にまかれた包帯を

 指差した。


「え、これ?

 怪我じゃないよ。

 今、昇降口の近くで献血してたんだよ。 

 大丈夫、注射しただけ。」


「え、悠は、血得意なの?

 私、注射とか無理だよ。

 できることなら

 注射されたくない派だよ。」


「血が得意な訳じゃないけど、

 普通かな。

 困っている人は助けないとって

 おばあちゃんからの教えだからね。」


「悠って偉いね。

 尊敬するよ。」

 

「そう?

 ありがとう。

 咲夜、みんなあっち行っちゃった。

 置いていかれちゃうよ。」


「あ、ほんとだ。

 次は、たこ焼き食べるって翼が

 言ってたんだった。」


「そうなんだ。

 それは聞いてなかった。

 行こうっか。」


 悠は、笑顔で誘導してくれた。

 咲夜は友達が増えて、

 声をかけてくれるだけでも嬉しかった。

 

 風貌は全然女の子に見えなくて、

 かっこよかった。


 何となく違ったドキドキがあった。


 ステージでは、

 次の催し物があったようだが、

 他の2人がどんどん先に進むため、

 聞かずに体育館の外に出た。

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