第4話(1)またまたまた悩む
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またあらためてわたしの名前は最寄田静香。16歳。この春から高校二年生だ。
さて、つい昨日、『新宿オルタナティブ学園』の二年生に晴れて進級して記念すべき三日目だったのだが……なんとも驚くべきことがあった。学園名変更? 残念だが違う。
……灰色の長髪でイケメンの勇者と会ったのだ。いや、何を言っているのだと思われるのも分かる。わたし自身も同じような気持ちだからだ。最初はその出で立ちから、どこかでゲームのイベントでもあるのかと思った――平日の朝からイベントというのも妙な話ではあるが――そのイベント関係者らしき人に話しかけられるとはまったく予想だにしていない。戸惑いつつも話を聞くと、その灰色髪イケメンの男性は、ジャッキー=バラバンさんと名乗り、自分のことは勇者だと言った。愚かだと思ってしまった。勇者なんてゲームやらアニメの中の話だと思っていたからだ。仮にそういう方たちが本当に存在していたとして、何故現代の新宿の高校にいるのだ?
ジャッキーさんは整った顔立ちで高潔な雰囲気を纏っている人だった。人によっては、それだけで心を許してしまう人もいるだろうし、その逆もある。わたしの場合は後者だった。ごく普通に生きてきたつもりなのに、勇者さんに話しかけられるとは。少女Aの自覚はあるが、村人Aの自覚はない。そりゃあ、高校に入学してからは不幸な体質になってしまったかのように感じていたが、それが現代日本に、いや、現代世界において存在するのかも分からない勇者さんにお世話になることになるだなんて、本当に想像もしていない。
しかし、ジャッキーさんが言うには――正しくは有識者のお孫さんが言うには、誰だよ――わたしはこの辺でもっとも運命的な勇者だという。何故か繋がってしまった、この世界と異世界、異世界からやってくるモンスターを討伐しようと言われた。実際に昨日、ゴブリンに遭遇してしまったのだから、信じるしかない。この学園の辺りにモンスターたちが出現するという。わたしはジャッキーさんとともに『運命的な勇者』として、モンスター撃退にあたることとなった。そんな……わたしはただ唖然とするしかなかった。
……まあ、嘆いてばかりもいられない。ジャッキーさんの話によると、モンスターの出現頻度というのは週に一度か二度らしい。頻度が決まっているモンスターってなんだろうとは思うが、モンスターが跳梁跋扈するのは困る。討伐するとしよう……うん?
「……」
何やら校舎前がざわついている……。平穏に過ごしたいところなのだが……む?
「ああ、おはよう! やっと会えたね!」
宇宙服のようなものを着た茶髪の男性がわたしを見つけて、爽やかに挨拶をしてきた。
「ど、どなたさまでしょうか……?」
わたしは困惑気味に応える。新年度四日目、またしても予想外の幕開けだ。
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