第4話(1)部室にて

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「はあ……」


 部室で俺はため息をつく。


「どうした村松っちゃん、ため息なんてついてよ」


 二つずつ、二列に並べた机で俺の前の席に座った紅蓮が話しかけてくる。


「いや……」


「疲れているの~?」


 俺の隣に座った雷電が尋ねてくる。


「疲れか……そうかも知れないな……」


「どうして?」


「眠れないとかか?」


「まあ、最近の睡眠は確かに浅いかもな……」


 俺は首を抑える。


「へ~疲れているのかな?」


 雷電が首を傾げる。


「疲れ……それはそうだろうな……」


「なんでまた?」


 紅蓮が首を捻る。


「なんでまたって……」


 俺は顎をさする。


「……ストレスなどが溜まっているのではないですか?」


 俺の斜め前の席で本を読んでいた疾風が目線を本に落としたまま、口を開く。


「ストレス?」


「ええ」


「ああ……そう言われるとそうかもしれないな……」


 俺はうんうんと頷く。


「なにをストレス溜めることがあることがあるんだよ?」


 紅蓮が疾風に問いかける。


「それは……」


「それは?」


「例えば……問題がある生徒への対応とかではないでしょうか?」


 疾風が視線を紅蓮に向ける。


「ああん? それって、もしかしてオレのことか?」


「もしかしなくてもそうです」


「なんだと……」


 紅蓮が疾風を睨み付ける。


「わわっ、やめなよ、二人とも……」


 雷電が二人を取りなそうとする。


「……言っておきますが」


 疾風が眼鏡のフレームを抑えながら、雷電に視線を向ける。


「え?」


「問題がある生徒……貴女も該当しますよ、金剛さん」


「ええっ⁉」


 雷電が驚く。


「そんなに驚くことですか……」


 疾風が呆れる。


「し、心外だよ!」


「そうだそうだ!」


 雷電の言葉に紅蓮が同調する。


「龍虎ちゃんと一緒くたにされるのは!」


「ああん⁉」


 雷電の発言に紅蓮が驚く。


「大体同じカテゴリーですよ……」


 疾風が呟く。


「大体って、大雑把な分け方やめてよ」


「ちょっと待てよ金剛、オレと一緒くたにされるのが心外ってどういうこったよ?」


「まあ、それは別にいいじゃん」


「良くねえよ」


「同じカテゴリーって……晴嵐ちゃんはウチらと違うの?」


「全然違うでしょう」


「どこが?」


「……主に成績など」


 疾風が眼鏡をクイっと上げる。


「むむっ、それを言われると……」


 雷電が腕を組む。


「けっ、多少成績が良いからなんだってんだよ……」


 紅蓮が頬杖をつく。


「勉学こそ学生の本分です」


「ちっ……」


 紅蓮が舌打ちする。


「あ、あの……」


 俺が口を開く。


「なんですか、先生?」


 疾風が俺の方を見る。


「非常に言い辛いことなんだが……」


 俺は鼻の頭をポリポリと擦る。


「どうぞ、遠慮なくおっしゃってください」


 疾風が俺を促す。


「……ストレスと言うのは多少語弊があるかもしれないが……」


「はい」


「いや、やっぱりやめておこう……」


「なんですか、それは……」


 疾風が眉をひそめる。


「村松っち、気になるって~」


 雷電が俺の肩を揺らす。


「そうだ、はっきり言えよ」


 紅蓮が俺を見つめる。


「あ、ああ……」


 俺は気を取り直して口を開こうとする。


「……なんなのですか?」


 疾風が首を捻る。


「……落ち着いて聞いてくれるか?」


「もちろん、大丈夫です」


 疾風が首を縦に振る。


「紅蓮」


「ああ」


「雷電」


「うん」


「そして、疾風も含めてだが……」


「ええ」


 俺は順に三人の顔を見る。三人はそれぞれ頷く。


「三人とも……」


「三人とも?」


「かなり……俺の心痛の要因の大半を占めている……」


「ああん⁉」


「えええっ⁉」


「わ、私もですか⁉」


 紅蓮、雷電、そして疾風が驚いて立ち上がる。

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