第11話
「……どうしよ。トキくん、とりあえず、あの
トキは頷く。
「良かった。じゃあーーーー」
「あの、さ」
「ん?」
行こうか、と
「……少し、気になる所があるんだけど、行っても良い?」
「気になる所?」
「危険な感じは今はしないから、一緒に来ても良いけど……」
「!……行く!」
トキが
「……分かった。この近くみたいだから」
来て、とトキは短く告げて歩き出す。
トキ自身も気配に半信半疑なのか、慎重に先に進んでいるようにも見えた。彼の邪魔にならないよう、そっと後ろから付いていくと、少し先に出たところで、道が
木々の
「?どうしーーーー」
「ーーーーどなた様ですか?」
ドクン、と、心臓がひときわ大きく鳴った。
声のしたほうへ顔を向けると、開けた空間にぽつんと、小さな小屋が建っており、そこの扉から少女がこちらをそっと
「……あの……?」
よく見ると、少女は目を包帯で
「ごめんなさい。神殿からお城へと行く途中で迷ってしまいまして」
「まあ……。神殿のお客様でしたか。それは失礼致しました。
「芽依と申します。……貴女も神殿の関係者でいらっしゃいますか?」
「いえ、私は……現聖女の妹なのです。ですが、私に力はなく、それにこのような体ですので、ここでひっそりと暮らしております」
これは内緒です、と人差し指を口元に持っていく。
「立ち話もなんですから、中へお入り下さいませ。もうすぐ雨も降って参りましょう。そちらの方は従者の方ですか?ご一緒にどうぞ」
「え?いえ、彼は……」
そこまで言って、芽依はふと気付く。
トキは現在死神の姿だ。普通の人には
力は無いと言っていたが、本人は無意識で言っているみたいだし、自分に力があると気付いていないだけなのかもしれない……。
ポツ、と雨音が聞こえ、芽依は困ったように笑った。
「……では、お言葉に甘えさせて頂きます」
* * *
「……何か、怪我でもされたのですか?」
直接的な物言いは避けたものの、両目を包帯で覆われているという事は、相当な深手だったのではないだろうか。
「……いえ、これは……」
言い
「ごめんなさい。言いにくければ言わなくて大丈夫ですよっ」
「……申し訳ありません。ですが、見えない訳ではないので、ご心配なく」
すると横からスッと、トキが手を伸ばす。
少女の包帯に触れるか触れないかのところで、動きを止めた。
「……
ぴくり、と少女が反応したのをトキはじっと見つめる。
「神殿を外から視てたけど、人外の気配がいくつかあった」
「え……そうなの?」
驚いたのは芽依のほうだった。
神殿の中に居たのに、全く気付かなかった。
芽依はこそっと、トキに問う。
「死神?」
「……違う、と思う。でも、地獄の匂いがする」
「どうして、人外の者がそんなに……」
「ーーーー……」
こちらの会話が聞こえてるか知らずか、少女はぐっ、と押し
トキは再び少女に問いかけた。
「……出ようと思えば出られるけど、出れないんだよね」
「……わ、私……」
「包帯で隠しているのは、目の色が原因?」
ビクッ、と少女の体が揺れた。恐る恐るトキの声のするほうを視る。
「……どうして……」
トキは、少女から視線を外す事なく答える。
「僕も、同じ、だったから」
「同じ……」
はっ、として、少女はトキの瞳付近に触れた。手が、
「……では、貴方も……」
「うん」
気配で、何となく気付いていたのだろう。少女は
「……貴方の言う通り、私はただの人とは違います。……この目に
一人、フィリアとトキの会話についていけない芽依に、トキは振り向いてこう言った。
「ーーーー彼女、瑠璃色の瞳を持ってる」
「!」
瑠璃色の瞳。つまりそれは、彼女が魔王の分身である、という事だーーーー。
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