第9話
テヌートも門番の役を朝まで交代だ。
「じゃあ俺は市場の様子を見てくるから、ここよろしくな」
「了解です!」
早く戻って少しは休んで下さいね、と雅弥の明るい声が聞こえて、軽く手で応じる。
テヌートにはそもそも睡眠というものは必要としていないのだが、疲れはするので目を閉じていると楽になるのも事実だ。
夏は夜も
ーーーー人外の仕業かも、と芽依は出発する前にテヌートに語っていた。……その気配は特に感じないが……。
「……もし、本当にそうなら……」
知らず手に力が
「……あれは」
芽依が遭遇した黒い
無意識に手を伸ばす。芽依が
ドクン、ドクンと心臓がひときわ大きな音を立て始めた。
ーーーー手にあるのは、一輪の
それを見た瞬間ーーテヌートの脳裏にあの日の記憶が呼び起こされる。
姫と贈り合った白い薔薇。姫の笑顔。姫の涙。
……その中で。
ドクン、と頭まで音が響き出す。
『ーーーー……』
まるでなんて事ないように。いつもの
『ーーーー……ヌート』
姫からの呼び掛けに、はっとして
『……王の、命令だ』
それだけ言って去っていった男の、王を殺した自分を処刑しに来た男の、感情を捨て去った表情を、今でも覚えている。
……そう、だ。
あの日も、任務だからと姫の側を離れて、そして、姫を失ったのに。
今はあいつが、公務だからと、俺の側を離れている。
これは、偶然なんかじゃない…!
テヌートは、ぐっ、と
本当は今すぐにでも芽依達を追いかけたい。だが、……今は、やることがあるから。
芽依の言葉が
『……今回テヌートには、裕祇斗を護って欲しいの。それから……"彼"を、ーーーーけて』
…………また、お前はーーーー。
『…………けて、……、テヌート』
同じ事を、繰り返す気なのかーーーー。
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